4000 ~short story~

守りたいもの。　Hiroki.T ページ20

―――ストーキングされてるかもしれない


彼女のAに、そんな話をされたのは、ある日の夜。


電話すること自体は珍しくないけど、


その日だけは、いつもとは違う雰囲気で電話が始まった。




都築「どうしたの？」




思わず、そう聞いてしまった。


しばらく、Aは言いたいけど、言い出せない、ような雰囲気。


いいよ、ゆっくりで。大丈夫だから。


そういうと、ごめんね、とつぶやき、小さな声で話し始めた。




「勘違いかもしれないんだけどね…」




わかりにくい話し方なんてしない彼女が、その時ばかりは、


頭がごちゃごちゃになっていたのと


パニックと恐怖で、話がぐちゃぐちゃで


要約すると、ストーキングされてるかもしれない、


ということだった。


一か月ほど前から帰ると毎日、後ろを歩いてる人がいるらしい。


こっそりスマホでばれないように帰り道、後ろを撮影したすると、


おそらく２０−３０代、普通体系の男性。


画質的にも詳しくは分からないが、


見た感じ知らない人、とのこと。


今まで接触してきたことはないらしい。


しかし今日、家に入ったらインターホンを押された、とのこと。


モニターには一瞬黒い影が見えただけらしくて、顔は見えなかったらしい




都築「いやもう、そこまでいけばストーカーだろ」


「やっぱそうだよね…」


都築「しばらく、俺んちくる？」


「それもいいかもしれないけど、たぶん拓紀んちもわかってると思う。

拓紀の家に行くときたまにいることがあるから…」


都築「そっか…警察には？」


「一応、被害届みたいなのは前に出してあるんだけど…」


都築「そっか…俺、今からそっち行くよ。」


「でも、たぶん今、マンションの下にいる…

たぶん拓紀の顔は割れてるし、拓紀になんかあったらどうすんの」


都築「あったらあったで逮捕できるし、俺、Aが心配だから」




ちょっと待ってろ、と財布とスマホだけもって、Aの家に向かった。


女へのストーキングは、元カレ、もしくは思いを抱いていた、抱いている男が多い


もし仮に、Aのことが好きでストーキングして、


その彼氏である俺に何かしてきたとしても、それでいいと思った。


今、Aが苦しんで恐怖と闘っているのに、そばにいてやらないというほうが怖い。


愛する彼女が、一か月も一人で苦しんでいたのなら、なおさらだ。

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