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目が合っただけではなかった。
明らかに私の方へと走ってくる重岡くんに思わず後ずさりした。
重岡「せんせーきて」
私の腕をガシッと掴んで、荒くなった息をはあっと整えた。
「え!?え!?」
そんな私たちを見て、周りにいた先生方が成瀬先生がんばれー!と声を上げる。
わたし、借り物にされてる!?
状況が理解した時にはもう、重岡くんに腕を引っ張られていて無我夢中で走っていた。
「ちょ、ちょっと!重岡くん、」
重岡「ええから走って!」
焦る私を横目で見て 大爆笑をする重岡くん。
久しぶりにみたその笑顔に、思わず涙が溢れそうになった。
先生さ、重岡くんのその笑顔が大好き。
青春をしているような気持ちになった。
初夏の風に吹かれて、男子生徒と 無我夢中で走る。
後半、重岡くんに引きづられるような形でゴール下私達は、なんと1位だった。
「はあっ、はっ、重岡くんっ、はやいってば」
重岡「先生がおっそいねん!運動不足やろ?」
真っ白な綺麗な歯を出してまた私をからかう彼は悪魔に見えた。
.
続々とゴールテープをきる生徒たち。
『それでは、生徒たちのお題を読み上げていただきます。』
1位の重岡くん。
そうマイクを渡される彼は、少し恥ずかしそうにはにかんで、
重岡「俺のお題は、”かわいい子”でした」
そうマイクに声を通す彼。
ヒューヒューと冷やかす声と、楽しそうに笑う声が、私の頭に響く。
恥ずかしい。
かあっと顔が赤くなってくるのがわかる。
そんなわたしにイタズラな笑みを浮かべる重岡くん。
.
着々と競技は終わっていって、ついに結果発表の時間。
グラウンドは、先生と生徒たちの緊張感に溢れかえっていた。
『それでは、結果発表です』
.
『優勝は…青組』
濱田先生のその声に、青組の生徒や、先生方が立ち上がって、嬉しさに歓喜していた。
神山先生がちらっとこちらを見て、ガッツポーズを小さくするものだから、私も嬉しくなって それを真似る。
一方赤組は、悔しさに肩を揺らして泣いている生徒や、やり切れないような表情の生徒が見える。
そんな仲間の背中をポンポンと叩いて、励ます重岡くんも。
自分だって辛いくせに、悔しいくせに。
この子は本当にどこまでもお人好しなんだな。
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作者名:わたし | 作成日時:2020年9月30日 22時