4 修正版 ページ6
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“コーネリア・ラセーヌ“
数年前に亡くなったAの母の名だ。
軽く飛ばし飛ばしにページを捲る。
母の日記だった。
(間違いなく母の筆跡だ。
これを一体どこで……)
日記を読んでいるふりをしながら、Aは思案した。
まずい状況だ。
「……」
「そんなに顔を青くしてどうした、
これは、御伽話なんだろう?」
シルバの大きな手が青ざめたAの頬を撫で、悪寒が走った。
Aは彼の手を払い除けると、すぐさま2人から距離を取る。
「ま、ここまで書かれてちゃ言い逃れはもう出来んよなぁ…A・ラセーヌよ」
ゼノの目がギロリと光った。
彼の言う通り、Aにはもう言い逃れは出来なかった。
冷静になったAはどうにか目の前のシルバとゼノから逃げる手段を考える。
(とにかく、この場から逃げる為にも外された腕をどうにかしないと)
深く息を吸って吐き、ゼノに外された肩に反対側の腕で触れた。
そしてそのまま肩を掴んで腕に力を入れて自力で肩をはめた。
一切声を漏らさせず、自力ではめ直したAにゼノは舌を巻いた。
(外した時に声をあげていた娘とは思えんな)
肩をはめ直したAが部屋の窓を見やるとゼノが立ち塞がった。
「おっと、何処に行くつもりじゃ?」
その反対側にはシルバが立っている。
唯一の逃げ場の窓にはゼノ。
この状況では彼等からは逃げられないだろう……普通の人間ならば。
(あまりこの力は使いたくは無かったけど…
まぁ、もう既に全て知られてしまっているし仕方がないか)
Aは長く息を吐く。
先程まで顔を青くさせていた姿とは一変して、不敵な笑みを浮かべていた。
どうやって母の日記を手に入れたのか、あの家に侵入出来たのかは知らないが、答え合わせくらいはしてやろうじゃないか。
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作者名:AS | 作成日時:2023年5月17日 7時