17 修正版 ページ19
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危うく目を切りつけられるギリギリで避けたが、トランプがAの頬を掠める。
避けた拍子に数滴 赤い液体が空中を舞い、たらりと頬を濡らした。
「おいおい、収穫するにはまだ早いんじゃかったのか?」
「やだな、ちょっと優しく撫でただけじゃないか♦︎」
何処が優しくだ、普通に切り掛かってきた癖に、と吐いてAはそのまま彼と距離を保ちながら、天秤で頬から流れた血を代償に短剣を長剣に変える。
「なぁにそれ、面白い能力だね?」
「よく言われるよ」
使い慣れた長剣を手にしたAは、投げられるトランプを斬り裂きながらヒソカとの距離を詰めていく。
遠心力の乗った斬撃をトランプで受け止めたヒソカは、予測以上の力に眉を寄せる。
Aはそこに更に剣に体重を乗せ、少しずつ間合いを詰めていく。
剣を受け止めるのに、気を取られているヒソカにAは足払いを仕掛けると、彼はギリギリで避けたもののバランスを崩した。
(今だ、!)
Aはそれを見逃さず、グンと懐に潜り込みんでヒソカの喉元ギリギリに剣の切先を突き付けた。
「はは、こりゃボクの負けだ♣︎」
ヒソカは両手を上げて降参の意を表し、Aは剣下げた。
辺りはいつの間にか暗くなっていた。
空には1ヶ月ぶりの作り物の月と星が浮かんでいる。
「そろそろキミの名前、教えてくれない?」
「……A」
青白い月の光がAの髪を照らし、薄く白い光を放っていた。
長い睫毛に縁取られたエメラルドグリーンはまるで宝石のようで、彼女の整った顔を更に引き立てている。
もはや神々しくもあるその姿に不覚にもヒソカは見惚れる。
Aはヒソカから目を逸らし、全焼した屋敷に目を向ける、。。
炎は完全に鎮火していた。
木造箇所は完全に焼け落ち、石造りだった箇所のみが黒焦げになって残っていた。
あの火の勢いなら、きっと骨も残らず全て焼けただろう。
「お前達の分まで、私は生きるよ」
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作者名:AS | 作成日時:2023年5月17日 7時