15 修正版 ページ17
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「やぁ」
突然、隣に男がしゃがみ込み声を掛けた。
Aはハッとして、すぐさま距離を取り短剣を片手に構える。
「そんなに身構えないでくれよ、ただ声を掛けただけじゃないか♦︎」
奇妙な服装で両頬にペイントを入れた赤髪の男は金色の目を細めた。
「おや?
驚き過ぎて言葉も出ないのかい?」
「…生憎、知らない人とは話すなと言い付けられているんでな」
「ボクはヒソカ、ただの奇術師さ♣︎
ほら、これで知らない人じゃなくなくなったろ?」
名を名乗り、ウィンクする男にAは眉を顰めた。
声を掛けられるまで一切気配を感じなかった。
数時間ぼうっと座ってはいたが、別に警戒を怠っていた訳でもない。
この男はいつからいた?
そもそもどうやって此処に入ってきた?
ていうか奇術師って何だ
あの男の仲間なのか
いや、そんな事は今はどうでも良い。
Aは溢れる疑問を振り払う。
一先ずもう少し距離を取って、隙を見て逃げるか……
「!!」
足を動かそうするとほんの僅かに突っ張るのを感じ、目を凝らすと細い紐のようなオーラが足に付いていた。
直ぐに刃でそれを断ち切ると、ヒソカと名乗る男は更に目を細くした。
「初見でソレに気がつく子はなかなかいないなぁ…
とても良い❤︎
だけど残念、」
「本命はこっちだ❤︎」
ヒソカが言い終わる前に急に体が引っ張られ、Aの首は彼の手に掴まれていた。
「っぐ……」
息ができない。
苦しそうに顔を歪めるAの顔を見て、ヒソカはうっとりとした表情で頬を染めた。
「あぁ、その表情…最高だ。
堪らなく美しい!!」
酸欠で視界がチカチカし始め、握っていた短剣が手から滑り落ちる。
私は死ぬのだろうか。
あぁ、でも私みたいな人間はいっそ此処で死んでしまった方が良いかもしないない……
上手く働かなくなった脳裏にそんな事がよぎった。
全てを放棄して諦めたように目を閉じる。
そんなAの様子にヒソカは先程までの恍惚とした表情から一変。
酷く冷めきった目でAを見ると、そのまま高い位置から手を離した。
急に手を離されたAは地面に両膝をついた。
体が勝手に新鮮な空気を吸い込む。
脳に酸素が行き渡ってくると、Aの頭は次第に冷静になってきた。
さっきまでの私は何を考えていたんだ。
私のせいで死んでしまった者達の目の前で、“死んでしまった方が良い“だなんて彼らへの1番の侮辱行為だ。
それだけじゃない。
約束したじゃないか、必ず戻るって。
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作者名:AS | 作成日時:2023年5月17日 7時