黒猫が二十三匹 ページ26
「もう！Aちゃん何処に居たの？探したんだから！」
前からやってくる少女、葉隠透。
個性が透明なので、姿は一切見えないが、今体操着を着ているのでどこにいるかわかる。
『…すまん』
「まぁとにかく！何かチア服をきなくちゃいけないんだって！」
『…私はパス』
「えー？私Aのチア姿見てみたいよ？」
『…また今度な』
太宰が言った事にどうしてもAは断りを入れることが出来ず、
また今度きるという事になってしまった。
Aは、ささっとその場から離れた。
「それが終われば最終種目、進出4チーム、総勢16名からなるトーナメント形式!!」
「一対一のガチバトルだ!!」
腕を組み、目を瞑り、じっとしているA。
「俺、辞退します」
その言葉に、Aの目が開かれる。
そして、まるで定めるかの如くじっと尾白を見つめた。
「騎馬戦の記憶…、終盤ギリギリまで、ほぼボンヤリとしかないんだ。多分、奴の“個性„で…」
「チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かな事だってのも…！」
「でもさ！皆が力を出し合い争ってきた座なんだ。こんな…こんな、わけわかんないままそこに
並ぶなんて…」
「俺は、出来ない」
はっきりと告げる尾白。
葉隠と芦戸が、尾白を、辞退させないように引き留める。
しかし、一向に尾白も折れはしない。
『……いいんじゃないか。ここは実力の場所。そんな甘ったれたことではここには立てないぞ』
きつい言葉に、みんなが言いすぎじゃないか、と言うがAはずっと無言だ。
尾白はしっかりと、言葉に隠された意味を分かっていた。
「そうか…有難う。やっぱり俺辞退するよ」
『‥そうか』
「僕も同様の理由から棄権したい！」
「実力如何以前に…、何もしてない者が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのでは
ないだろうか！」
B組の人も、声を張り上げトーナメント戦を辞退した。
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作成日時：2019年8月27日 18時
