顔も知らない彼女〈フロイド・リーチ〉 (ページ7)

今日:18 hit、昨日:4 hit、合計:4,544 hit

慈悲は虚像で応用にページ7

オンボロ寮で一日宿し、学校に行く頃には空はすっかり晴れていた。

ジェイドはオレの顔を見て、なにを考えたのか「…よかった」と安心したように笑った。

何言ってんの、と返すと、いえ、こちらの話です。と首を振られる。

そのままジェイドとナイトレイブンカレッジへ向かった。

「おはようございます。Aさん」

「ジェイド先輩。おはようございます、」

クラスに向かうのに、また、小エビちゃんと会った。ジェイドはにこりと笑って、挨拶。

小エビちゃんもなんでもなさそうに頭を下げて返す。

当然、オレは無視。

「フロイド・リーチ先輩も、おはようございます」

素通りしようとしたオレに声をかけてきたので、「うぜー、話しかけないで」と手で払うフリをした。

すると、なんだかふふっ、と笑ったような声が聞こえた気がする。

なんだよ急に、こわい。

そのまま、いつも通りジェイドと小エビちゃんを二人にして、オレはクラスへ向かった。

今日も飛行術は合同。

「フロイド先輩。まだ記録、」

「あーはいはい、うるせーなあ」

小エビちゃんを制して箒に跨る。ふわっと浮いて、しばらくするとまた逆さまになって、今度は箒に振り落とされた。

でも、小エビちゃんはにっこりと笑って、記録を書く。

「…きもちわりー、」

そんなオレの言葉にもまた、ふふ、と笑うだけだ。

「ちょっと、離れてくんない。うざい」

「すみません、」

錬金術もいつも通りいっしょ。

いつも通り、隣同士でうんと端に寄るオレと、真面目に授業を受ける小エビちゃん。

オレがうざそうに言うと、笑顔で小エビちゃんは離れる。

「どいて」

「あ、すみません、」

食堂でも、これまたやっぱり、出会う。

ジェイドは今日はいないけど、いつもと一緒だ。

オレより前にいる小エビちゃんに言い放つと、小エビちゃんは笑ってオレに道を譲った。

オレはてきとーにヤキソバパンをひょいと手に持って、てきとーにマドルを置いてそこを離れた。

「フロイド」

「なに、」

ジェイドが、話しかけてくる。ヤキソバパンを食い終わって、昼寝でもしようかと思っていたところだ。

ジェイドは少し笑いながら、オレに話しかけてきた。

「貴方、このままでいいのですか？」

Aさんのこと。

そう言うジェイドを見つめるオレは、どんな顔をしていただろうか。