顔も知らない彼女〈フロイド・リーチ〉 (ページ3)

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大嫌いと別れと嘘ページ3

「フロイド。なぜ、彼女にあんな言い方を…」

「…別に？ホントにきめぇなって思ったから言っただけ」

ジェイドが話しかけてくる。

なんか文句ある？と返すと、ジェイドは黙り込んだ。

だから、その寂しいみたいな表情(カオ)、やめてよ。

飛行術の、授業。

…なんで一緒なの。

「あ……、」

小エビちゃんと目が合う。

気まずい雰囲気が流れたのが、肌で分かって、オレは髪を掻き上げた。

オレは小エビちゃんの横を素通りしようとした。

彼女の持っている、ボードがちらりと見える。

どうやら、彼女は魔法を使えないため、記録係を任されたようだ。

…てーことは、オレも記録されなきゃダメじゃん。

ホント、離れると決めてから無駄に一緒になるのはなんでなの。

「あの……、フロイド・リーチ先輩、」

「あ？なに、気安く話しかけんなって」

小エビちゃんがおずおすと話しかけてくる。オレはギロリと一瞥して、そのまま離れようとした。

小エビちゃんが一瞬だけ、やっぱあの悲しそうな表情になって、すぐに戻った。

「記録、終わってないのが、先輩だけで…」

「…………」

オレは黙った。だったらそう言えし。

オレは箒に跨って、「とっとと記録つけろよ」と言い放ち、飛ぶ。

１ｍくらい飛んだところで、感覚がうまく掴めなくなって、箒に対して逆さまになってしまった。

高度もぜんぜん上がらない。やっぱ、陸は勝手がちがうなぁ、

そのまま、箒が急に滑空し始めて、オレは特に抵抗することもなく、地面に激突して落ちた。

「…………」

「………」

ちらりと小エビちゃんを見ると、目をまん丸くさせて、ぽかん、と効果音でもつきそうなカオをして、オレを見ていた。

「………ふ、っ」

瞬間、小エビちゃんは吹き出す。

「く、っ、ふっ、ふふ、っははっ、」

控えめに、けれど口を薄く開けて、小エビちゃんが笑った。

「ごめ、なさ、ふ、っふふ、」

謝りながらも、耐えられないというように、笑い続ける。ツボにはまってしまったのか、オレに顔を見えないようにしながら、それでも笑っていた。

ふと、よぎる。

『ふ、ふふっ。あははっ、』

笑い声。

あれは、誰の―――――――――、

小エビちゃんに、手を伸ばす。

小エビちゃんは顔を隠しながら笑っているせいで、それに気づかない。

この声は、

伸ばした手は、空を切った。