顔も知らない彼女〈フロイド・リーチ〉 (ページ2)

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もう忘れてしまったのページ2

「、あのっ、すみませんっした！！」

「本当にすみません！！」

カニちゃんとサバちゃんが続けて頭を下げる。

オレは出来るだけ優しく笑って、「も〜、顔上げてよぉ」と二人に言った。

顔を上げた金魚ちゃんとサバちゃんは、唇を噛んで、本当に申し訳無さそうにしている。

Aがかぶった魔法は、どうやら思い出から一人を消す魔法らしい。

金魚ちゃんたちが運んでいた魔法瓶のひとつにそれが入っていて、二人は誤って落とし、それがAにかかってしまったそうだ。

その『思い出』に選ばれたのが、オレってわけ。

「…あの、本当に、なんて言ったらいいか……。本当に、すみません…！」

「絶対に、治す魔法を作るので、もう少しだけ待ってていただけませんか！！？」

「もぉ〜。もういいって」

なんでもないふうにしてそう言ったオレに視線を合わせ、二人して「え…、」と黙ってしまった。

オレが遠慮してると思ってるのかな。でももう、ホントにいいんだ。

だって。

「…もう、いいの。ダイジョーブだから、」

無理だとわかってたの。彼女とオレでは、全てが違いすぎる。

狂おしくなるくらいに、すべてが。

いつかは彼女も、元いた世界に帰る。オレだって海に帰る時が来るかもしれない。

少し早く来ただけの、なんてことない別れだ。

大丈夫なんだから。

「…………小エビちゃん、」

だからもう、Aとは呼ばない。

「…フロイド。クマが出来ていますよ」

「え？あー、昨日ゲームに夢中んなっちゃってぇ。すっごいおもしろかったの」

「…そうですか」

登校中に、ジェイドに言われて、目の下を触る。

ジェイドはなんだか、悲しそうな顔をした。

「―――――――――おはようございます、Aさん」

「ジェイド先輩。おはようございます」

ジェイドの挨拶に、口を閉じて笑いながら返す。

「ジェイド。オレ先行くから」

「っどうして、」

ひらひらと手を振って、ジェイドの横を通る。

ちらりと小エビちゃんを見やって、ひどく機嫌悪く、オレは言った。

「どうしてって…、小エビちゃんの近く、寄りたくないんだよね」

侮蔑の感情をこめて、ねめつける。小エビちゃんは目を少し開いて、悲しそうに笑った。

「…フロイド・リーチ先輩も、おはようございます」

「気持ち悪いから話しかけないでくれる？」

忘れて。