▶湊瀬輪廻の嘆声 ページ10
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「命日だッタンスネー。タイミング悪ィなァ」
「君がね。………というか、五条さん絶対知ってたでしょ」
墓石を見やって、俺と湊瀬先輩は声を漏らした。彼が墓場にいた理由がようやくわかった。今日は彼の両親の、命日だったのだ。
供えてある花は「スノーボール」と言うらしい。風に揺れて花を散らすのが印象的だった、真っ白い花だ。
心なしか、墓石を見つめる湊瀬先輩はずいぶんと穏やかな顔をしている。微笑んではいないが、口角が上がっているようだ。
呪詛師だった両親がそんなに大切か、と俺だったら思うが、そんなのは関係ないらしい。だが両親と大して顔を合わせたこともないというのにこの反応なのだから、尚更不思議なのだ。
「両親が呪詛師ッテ、先輩ハ知ッテタンでスかー?」
「まさか、知らなかったよ。大体呪術も術式も何か、よくわからなかったしね」
「まァ、そッか。普通はソーデスヨネー。呪詛師になッテ色々知ッタッテ感じでスか?」
「そうだよ。呪詛師にならなかったら、一生知ることはなかっただろうけどね、なっちゃったから」
「ヘェ、皮肉」
俺が真顔でそう言うと、湊瀬先輩は俺の顔を覗き込み、やがて大きく溜め息をついた。
「はぁ………君さ、本当にかわいくないよね。君みたいなの、僕将来不安なんだけどな」
「エー、なンでデスか。心外ッスワ、失礼ー。オレは可愛い後輩デショ?先輩こそ全く先輩ラシくナイですガ、ダイジョーブなンデスか?」
「うるさいよ。僕は良いのさ、融佑くんよりも年上だから。けれど君は、なんかいつか上司の逆鱗に触れてえらいことになりそうだよ。僕今から怖いもん」
「アハハ、余計ナお世話ッテ知ッてマス?」
「余計なお世話も時には大事なんだよ。これ、先輩からのありがたいお言葉ね」
「イラねェ………クソほど要ラなインで返品しまスワ、ドーゾ」
「何言ってんの僕もいらないよ、やめて」
「ウワムカつく。先輩エグい腹立ちマスネ、すげェ」
俺の言葉にガン無視を繰り出して、湊瀬先輩はまた、大きく溜め息をついた。
俺の聲、きみの聲。
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作者名:かくも。 | 作成日時:2024年2月13日 17時