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「君、五条さんの差し金でしょう」
嫌そうな顔をして俺にそう言う " 先輩 "。頭の回転がはやいひとだな、と俺はひそかに、ほんの少しだけそう思った。
白い髪が日光に反射し、揺れる。まるで外に出たことがないかのような肌は初雪の匂いを思い出させた。
適当に選んだ、お洒落そうなカフェに入っては、開口一番にその人はそう言う。意外とせっかちなのかもしれない、まずはこの雰囲気を、楽しんだっていいだろうに。
「差し金ッテなンスか、ひッでェなァ。オレは自分で来たクテ来たダケッスヨー？自分の意思なノニ」
「その嘘、まったく面白くないから止めたほうが良いよ。君も無駄な時間過ごしたくないでしょ」
うんざりしたような顔でそう言うものだから、俺はわざとらしく肩をすくめてみせた。勿論この人は反応を示さずに、だいぶ前に運ばれてきたぬるいコーヒーを飲んでいる。
しかし、この人が悟くんの言っていた人に間違いなさそうだが、本当に呪詛師なのだろうか。全くそう見えない上に、華奢なおかげで非術師の中でも非力そうだ、と失礼な感想ばかりが頭に浮かぶ。
じ、と観察するように見ていたせいか、先輩と目が合う。訝しげな瞳が俺の瞳と交錯した。
「………何？人のことジロジロ見ちゃって。何事？」
「ン、イヤ、名前なンて言うノかナーッテ」
「あぁ………そういえば、自己紹介してなかったかもね、お互いに」
コーヒーを置いて、その人は胸に手を当てて俺を見つめる。その口の動きは、なんだか新鮮であった。
「僕の名前は、
「エ、教えル義理ありマス？」
「は？冗談でしょ？君って常識ないの」
自分もしたんだから自己紹介ぐらいするだろ、という湊瀬先輩の視線が俺を突き刺す。冗談が通じないタイプか、捻くれてるタイプのどっちかだな、と推察をつけた。
「アハハ、冗談じャナイッスか。ヤダなァ。オレの名前は赫谷融佑ッス、ヨロシクデース」
「………融佑くんね、よろしく。………それで、君も呪術師、だよね？」
伺うような先輩の瞳には答えない。「どッチでショウ」ととぼけながら、窓を見やる。
あぁ、でも。と付け加えるかの如く、呑気に俺は言ってみせた。
「先輩とは違ッテ、ちャンと呪術師デスヨ。呪詛師のオ前とは、違ッテ、ネ」
低い声だったのかもしれない。先輩は、瞬きをした。
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作者名：かくも。 | 作成日時：2024年2月13日 17時
