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供え物の花が揺れる。
花の種類だなんてまるで知らないものだから、適当に横目で流す、と、
「何してるの？」
「！？、 …………び、ッくリ、しタ、」
「え、そう？ それはごめん、急に話しかけたしね。びっくりさせたかも」
かも、というか実際にしたんだけど、という言葉はつっかえて出てこない。代わりに俺は声の聞こえた背後へ首を傾ける。
…………が、おかしい。声の主はそこには居なかったのだ。
「……？ アレ、気のせいカ……？怖、誰もいなイなンテ、」
「…………おい、此処にいるだろ。視野狭くない？」
「ン………、ア、ホントだ、いタ。ちッさスギて見えナかッタ。ゴメンナサーイ」
「いっぺん死ぬか？あ？？？」
そのちっこい、俺の頭ひとつ分以上は小さい人は、思いっきり眉間に皺を寄せて、今にも俺に裏拳でも入れてきそうだ。イヤーコワイコワイ。
白い髪に、白い肌。俺よりも10cmくらいは小さそうなその身長と、中性的な顔つきも相まって、一見すると女の子に見えてしまいそうだ。と言っても声の芯がちゃんと低いので、俺は男だとすぐに分かるけれど。
「はぁ………。で？何か用？人のお墓の前で立ち止まっちゃって」
溜め息をついて、俺にそう言うその人。丁度目の前にある墓を見てみれば、墓石には「
「人の墓ッテ、ココアンタの墓？」
「そうだけど………初対面の人間にアンタ呼ばわりか。いい度胸してるな………」
「イヤ、初対面に「いっぺん死ぬか？」モだいぶイイ度胸デハ？」
「それは君が悪いからノーカン」
なるほど、見た目に反して意外と子供っぽい先輩かもしれない、この人は。
お墓の花がまた揺れる。白く、沢山の小さな花が集まって大きくなったような花で、綺麗にそよ風に揺れていた。
「君もお墓参りか何か？あんまり墓地に長居しないほうがいいよ」
「へェ。それッテ死ヌかラッスかァ？センパーイ」
「…………あ？」
俺の言葉に、少しだけ目を見開くその人は、やがて全ての合点がいったようだった。
この人は分かっているのであろう。見えているはずだ。俺のすぐ背後にいる呪霊も、俺の呪力も、全てが。
「ァ゙、ア゙、ア゙ア゙ェ゙ｧ ゥ゙ア゙ｪｱ アｪｩ、アｧァ゙！！！！」
「まァ、取り敢えズ、オ話しまショ？ 先輩」
背後で襲ってきた呪霊を、面倒くさいので振り向かず適当に祓い、俺はそう言った。
息を飲む音が、その場に響く。
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作者名：かくも。 | 作成日時：2024年2月13日 17時
