元呪詛師・湊瀬輪廻の『聲』 ページ6
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その説明を聞いて、俺は一体どんな顔をしていただろう。
いや、これは問いではない。ただの確認、誰にも答えは聞いてない。
だってきっと、物凄く最悪そうな顔をしていたと思うから。
ニコニコ笑顔でその説明を話す悟くんは、頭がおかしいとまでは思わないけど、やっぱりどこか変わっているに違いない。まぁそこが好きなんだけれど。
俺の反応をよそに、更にその説明を続けていく。地獄耳の俺は、耳を塞ぎたい衝動に駆られた。
その説明とは、呪術界であればよくある、呪詛師の話であった。
話を聞いていれば、普通の男の子が闇サイトに辿りついてしまい、呪詛師の両親を殺されて呪詛師になるという話だ。
わー胸糞悪ぃ。俺は胸糞の悪い話が好きじゃないのに、悟くんは話をやめない。
最後のほうはほとんど聞き流して、ようやく終わった話に溜め息をついたとき、おそろしい言葉が俺の耳へ鎮座してきた。
「今から、その呪詛師くんに会いにいきまーす!」
「は?」
は?である。
俺は地団駄を踏みたくなった。
最強、だなんて肩書き大嫌いだ。悟くんは大好きだけど、あんなクソみたいな肩書きがあるせいでこういう事になる。はぁ゙あ゙、という呻き声のような溜め息が、辺りにこぼれた。
悟くんはどこかって? 例に漏れず急遽任務が入ったとかで退散したよ、死ね。
悟くんがいないのに俺がソイツのところへ行ってやる義理など微塵もない。Uターンして寮に帰ろうかとも思ったけれど、あとで麻婆豆腐を奢ってやるなど言われたら、いくら足が重くても出向くしかなかった。
もう一度、深い溜め息をつきながら、スマホで地図を見やる。
地図の指す場所には、ここからそんなにしないで着くだろう。それがまた余計に、俺の心を重くさせた。
呪詛師になんて、会いに行きたくもない。つーか会ったら殺していいかな、だなんてすこしだけ殺気立ってみせる。結局面倒くさいだろうから、しないんだけど。
溜め息をつきすぎたせいで、なんだか喉が痛い。喉仏を潰しながら、俺は歩を進めた。
「…………正気か?」
俺はその場所について、思わず素でそう言ってしまった。
なぜなら、俺が向かっていた場所は、そして着いた場所は墓場だったからだ。静謐な空気が漂っていて、思わず吐き気がするほどに。
こんなところに呪詛師がいるだなんて、なんの皮肉。
俺はそう思いながら墓場を歩く。後ろの人影には気付かないのだ。
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作者名:かくも。 | 作成日時:2024年2月13日 17時