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立ち上っていく煙を見つめる。俺は若干引いた目だったかもしれない。


すると、俺のそんな視線に気付いたのか、その人は一瞬で煙草を振り火を消して、直ぐ側に置いてあった灰皿に吸い殻を押し付けた。




そして。


「初めまして〜! もしかして後輩くん? どうしたのぉ、なんでこんな所にいるのかな?」

「…………ア゙?」


にっこり、と効果音でもつきそうな笑顔で、その人は俺へと話しかけてきた。ついでに首こてんのトッピング付きだ。

明らかな態度の変化に、俺は柄にもなく低い声を出して、地を這うような疑問の音を上げた。



俺のそんな奇っ怪なものでも見るような視線に、その人はまたさっきの作ったような声で話し続ける。



「えぇ〜、ひどいよ〜! もう、君の名前知りたいんだぁ。教えてくれるかなぁ〜?」

「エ゙、イヤ…………赫谷融佑ッス、ケド………」

「そっかそっかぁ、赫谷くんかぁ!私は3年生の、榊宮(さかきみや)紫弦(しずる)!よろしくねぇ〜!」

「ア゙、ウッス……………」





気持ち悪い、という声は流石に飲み込んだ。うん。


先程までの凛とした表情はどこへやら、媚びるような声だ。こんな接し方をされたこともなかったので、若干対応に困る。そんな俺にすらまたこの人は、「どうしたの〜?」と言って首をかしげるだけだが。

猫の先輩の次は、猫被りの先輩か。あー、キャラ濃い。


一応だけれど、この人に聞いてみた。一応、念のため。




「………アノ、榊宮先輩? さッき煙草、吸ッテマシタよネ゙?」

「えぇ、吸ってないよぉ〜!?もう、赫谷くんってば、幻覚でも見ちゃったのかな〜?」

「…………阿婆擦れ、売女」

「あ"?」



俺がボソリと呟くと、案の定さっきまでの猫撫で声をやめて、ド低い声を出してピキってきた。猫被りじゃねえか、なんだこの癖強ぇ先輩は。

榊宮紫弦という名前を聞いて思い出したけれど、この人上層部から問題児扱いされている人じゃないか、なるほど、これは問題児だと妙に納得してしまう。引っ叩かれそうなので絶対言わないけれども。



「榊宮先輩メッチャ猫被リじャナイッスか………。オレ久々にこンなビックリしタカモ」

「……やだな〜、猫被りってなんのこと? 赫谷くんの言ってること、私分かんないよぉ〜」

「ア゙、もウイイッスよ、ソレ。飽きたンで」

「飽きたって」


笑いながら、榊宮先輩が新しい煙草の箱を開け、一本取り出す。あぁ、ヤニカス………。






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作者名:かくも。 | 作成日時:2024年2月13日 17時

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