▶唐猫ヤマトのアニメ声 ページ15
.
「どーでもイイッスけど、先輩ッテなンか、アニメの主人公みてェナ声ッスネ」
「んん〜?そんなこと、初めて言われた………嘘、俺っちそんなかっこいい声に聞こえる?」
「まァ、その声ヨク通リマスし」
かっこいいか?と俺は思う。アニメ声の、よく通る体育会系の奴にはよく虐められていたからか、正直大してかっこいいとは思わないし、俺は好かなかった。
価値観の違い、だな。とぼんやり思う。まぁ俺に価値観が合う奴なんてひとりもいないので、別に特にどうでも良いけれど。
「んふ、なんか照れんね〜!でもありがと、俺っちそんなん言われたことねぇから、素直に嬉しいわ。融佑っち、センキュ〜!!」
「ハァ………別に、こンな程度イツでモ言イますガ」
あーやっぱり、コイツは単純。だなんて、またそんな言えない言葉が俺の喉をくぐって抜ける。猫っぽい先輩とは、俺は根本的に合うことがないのかもしれなかった。なかなかに、悲しい悟りだ。
はは、まぁ、結局は心底、どーうでもいいんだけど。
「俺っちがアニメ声だとしたらね………う〜ん、融佑っちはなんだろ、どんな声っつったらいいかな………」
「アー、オレはイイッス。どーせこンな気持ち悪イ声デスし」
手を振って、唐猫先輩に言う。こんなに気持ち悪い、ゴミみたいな声を例えられるなんて御免すぎる。もうこの声にはなにひとつ、手を伸ばしてほしくないのに。
俺の言葉を謙遜だと思ったのかなんなのか、唐猫先輩はやたらと食いついてきた。
「え、気持ち悪くなんてねぇよ!かっこいい、いい声じゃん?俺っち、融佑っちの声好きだよ!」
「アハハ、そーイウのマジ要らネッス。ダイジョーブでスヨ、無駄に気ィ遣わナクて」
「はぁあ〜……!?気なんて、使ってねぇっつーの……!」
唐猫先輩のその言葉も、どこかわざとらしく感じられてしまう。俺はやっぱりクソ性格が悪い。あはは、誰か矯正してくれほんとに。
先輩は自らの胸に手をやって、正義のヒーローさながら、かっこよさげに言ってみせる。
「待っててね、融佑っち。絶対俺っちが、証明してみせるから。融佑っちの声が気持ち悪いはずない、どれだけ、君の声が素敵かを、さ!」
にゃははーと笑ってみせる、唐猫先輩は。
アニメ声、それすなわちアニメキャラの如く特徴的な声のことである。
俺の聲、きみの聲。
17人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かくも。 | 作成日時:2024年2月13日 17時