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「先輩ッテ、なンか堅気ッぽクないッスネ」
「え゛」
ふいに、唐猫先輩が固まる。なんだ、本当に暴走族とかそういう感じの輩か、こわ。近付くのやめよ、と唐猫先輩から、すすす、と後ろに避けて距離を取る。ショックを受けたような顔をしている唐猫先輩は、慌てて言った。
「ちょッ、ちょっと待って!?俺っちは別にちょっとヤンキーかじってたってだけだから!!」
「アー、ソッチか。元ヤン………イヤ、雰囲気消せテねェシ、元
「……融佑っち、エスパー……?」
「アハハ、図星かァ」
普通に恐怖を感じているらしく、先程とは真逆、今では自分から俺との距離を取っている。
はぁ、と溜め息をつく。うーん、喉の痛みはまだ治まってはくれないみたいだ。
「先輩の術式ッテなンなンでスかァー?」
「急だねぇ!?融佑っち、話の脈絡ねぇ………!!」
「イヤ、気まズインで適当になンか話題探しデス」
正直に言うと、唐猫先輩はとても微妙そうな顔をして、「んんん………ふくざつ………、」と言っていた。確かに複雑そうな顔だ。
「まぁ、いいか!俺っちの術式は
「ヘェー………ホント、何から何マデ、猫ッスネ。アンタ」
「んふふ、でしょでしょ、もう名前からしてそうだしね〜!俺っちは自由で気ままに過ごすのが好きなの。責任とか義務とか面倒じゃん」
あー……猫、と、心の中でひそかに結論づける。うん、コイツは、猫だと。
バイトする猫なんて見たことねぇ………とは思うが、なんとなく唐猫先輩は守銭奴そうであった。いや、別になんの根拠もないのだが。
ニッコニコの笑顔は、いつか猫のように、気まぐれに変わったりするのだろうか。
たとえば、憎悪―――――――――とか。
「まっ、融佑っちも、なんかあったら俺っちになんでも頼んでくれていいからね!この頼れる先輩、唐猫ヤマトにまっかせなさーい!」
笑顔で、唐猫先輩が手を伸ばしてくる。一瞬「?」が浮かんだが、そんな間もなく、その手は俺の頭にきて――――――
瞬間、俺はその手を乱雑に振り払った。
殴られるのかと、思ってしまう。俺はまだ、誰かに触れられるなんて気持ちが悪いのだ。
唐猫先輩の表情は、見えない。ただ「あ、」という木漏れ日のような声だけが、地面を滑り落ちる―――、
これが、元ヤンキー・唐猫ヤマトの『聲』なのだ。
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作者名:かくも。 | 作成日時:2024年2月13日 17時