影山飛雄に嫌われた〈影山飛雄〉

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「―――オイ。1回しか言わねぇから、よく聞け、ボゲ。







―――――――――ずっとずっと、お前のこと、嫌ってなんかなかった。


好きだ、から。Aのこと、好きだから、俺はお前と、付き合いたい」




ぐい、と、いつの間にか立ち上がった影山くんに引き寄せられて、そのまま影山くんの胸に飛び込む形になる。

耳元で囁かれたその言葉には、どこか優しい意味がふくまれていて、思わず、え、と声を漏らしてしまったほどだ。


言った影山くんも、言われたわたしも、どちらも熟れた林檎のように頬が赤いのは事実で。





好きだ、なんて言葉も、だったら全部現実？

ねぇ、聞いてもいいかな。影山飛雄くん。




高鳴る胸を無理矢理にでも押さえつけながら、そんな風に思っていると、指し示したように、影山くんと目が合った。

ひどい顔してないかな、嫌われないかな、だなんて、たったこれっぽちのことだけでも、大きく心臓が跳ねてしまう。どうしてかわからないのに、顔も、身体も、すべてが熱を持っているみたいだ。



やがて、影山くんは、ふ、と目尻をゆるめる。笑みというには少しきつい顔だったけれど、でもとても優しい表情だな、とわたしは無意識に思っていた。





「………影山くん」

「なんだ？」

「あの、ね。わたしも好きなの、影山くんのこと」

「………知ってる、けど」


ふい、と、赤くなった顔をまた逸らす影山くん。彼は意外と照れ屋かもしれない、だなんて、少しだけ彼がかわいく見えてしまったのは内緒だ。


また胸が、きゅうと鳴る。恋とはこういうものなのか、だなんて、まるで安っぽい感想しか出てはこないけど。




「あのね、だから、その、付き合ったり、出来るのかな、って、」

「………出来るだろ。つーか俺は、もうそのつもりだったし」

「え、え、あ、えっと、そうだね、そっか」


あぁあくそ、顔の火照りが止まない。こんなんでまともに影山くんと話せるわけはないじゃないかと、ちょっと叫びだしたくもなるが、そこは堪えよう。彼に嫌われたくないのだから。




「影山くん」

「………なんだ？」

「なんだかんだ」

「……………お前さぁ、」



わたしの言葉を聞き、少しフリーズした影山くんは、やがて口角を上げた。

わたしも、その笑みにつられて笑う。ふたりで言いようのない幸福感に包まれながら、ずっとずっと、笑っていた。


もう何も、言わずともわかる。それほどに。












影山飛雄が、大好きだ。








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