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「待って!禪院さん、これを!」
「?」
岸辺くんの声で、術式発動が止まる。
彼の身体が無数の呪力を帯びている。そしてその呪力が、わたしの身体にもついてきた。
「僕の術式なんです。呪力で肉体を強化しました!」
「!……ありがとう、岸辺くん」
再び、術式を発動させる。
頭がクリアになる。新しい動きのイメージが湧き上がる、反転術式をかけっぱなしにしているみたいに、疲労感が何一つない。
肉体強化って、自分でやったことなかったけど、すごい。いや、多分自分でやるより凄い効果を今体感できているのだろう。
呪霊の攻撃も、するりとなんの苦もなく避けられる。簡単に避けた後、わたしは身体を逆回転させて脚に呪力を集中させる。
顔面を思いっきり蹴り上げた。呪霊は断末魔を上げる間もなく、塵になって消えていった。
「「人面犬」!食い尽くせ!」
岸辺くんの声が後ろから聞こえる。振り向くと、蛆のように湧いた呪霊の山に、鋭い牙を持った四足歩行の呪霊が襲いかかっていった。
たちまち、呪霊の山は拡散し、塵になる。
凄い。やっぱり岸辺くんは器用で、要観察対象だ。
散りゆく呪霊たちの山を見届けながら、わたしはそんな風に思った。
「岸辺くん。あの……ちょっといいかな」
「?、いいですよ。何ですか?」
補助監督の車を降りてすぐ、わたしは岸辺くんを引き止めた。
岸辺くんはあいもかわらずほどよく垂れたタレ目でわたしをにこにこと見つめ返してくる。
「岸辺くんの術式は呪霊操術だよね。でも、肉体強化してくれた時に、“僕の術式です”って、言わなかった?」
「あぁ、そのことですか」
岸辺くんは表情を歪めることもなく、穏やかな様子で、わたしに説明をしてくれた。
「昔の話ですが……ある方の血を飲むと、その術式を使えるようになったんです」
「え、……!?」
にわかには信じがたい話だった。けれど、それを話す岸辺くんの表情は真剣そのもので、嘘を吐いているとはとてもじゃないが、思えない。
「残念ながらその方は亡くなってしまいましたし、僕がそういう特異体質だったのか、他の術式でもそうなるのかは不明ですが……。
血を飲んだことで、この
彼、岸辺雛は呪霊操術を扱う呪術師で、16歳の三級呪術師。
監視役・禪院星来から、要観察対象・岸辺雛。あなたへ。
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星音(プロフ) - かくも。さん» Ifでも泣いちゃいますよ。なりチャでも死んでたら号泣ですね。ほんとifでよかった。はい、これからもよろしくお願いします! (1月2日 13時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - 星音さん» コメントありがとうございます。Ifとはいえ、一回書いてみたかったんですよね………そう言って頂けて嬉しいです、成りチャなどではまだ生きてますので、これからもよろしくお願い致します! (1月2日 12時) (レス) id: 447326c752 (このIDを非表示/違反報告)
星音(プロフ) - 星来ちゃんが、死んじゃった……。泣けない鈴の代わりに私が沢山泣いちゃいました (1月2日 10時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - jyudo0517さん» こちらこそありがとうございます……!奈穂ちゃんと星来には普通の女の子としていっぱい喋って頂きたかったので、いっぱい話してもらいました!笑 こちらこそ、これからもよろしくお願い致します! (12月29日 19時) (レス) id: 2246c6766d (このIDを非表示/違反報告)
jyudo0517(プロフ) - 奈穂が話してる………!(感動)ありがとうございます!!解釈一致です!!これからもよろしくお願いいたします!! (12月29日 19時) (レス) @page40 id: e508273c49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かくも。 | 作成日時:2023年11月4日 19時