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「まー今日はそれを渡しに来ただけじゃないんだけどさ」
五条悟は自らの頭の後ろで腕を組み、にやにやとしながら言う。
わたしの訝しむような視線を受け流しながらも、彼は楽しそうだ。
「星来さぁ。なんで急に高専に通うことにしたの?しかも三重の支援高専だなんて」
この人は、なんでそんなことを聞いてくるんだろう。聞かれて特に困ることではないけど、それを知って何に成ると言うのか。
にやにやした顔を不思議そうな表情に変え、五条悟は肘をつきながらそう言った。
わたしは何も言わないが、動揺もしない。脳死状態で、彼とわたしの間にある虚空を見つめる。
「別に……社会経験も必要だと思いまして」
「あ、そっちなんだ。僕としては、禪院家から離れたかったからかと思ってたのに」
けらけら笑う五条悟を見て、素直に、しくったと思った。
そこは繕わずに、正直に言うべきだったかもしれない。なんてまぁ、今言っても遅いのだけれど。
やっぱり、彼は何か気付いているのか。その目隠しの先の表情を伺うことは出来ないため、悩ましい。
勘の鋭い人だと思う。目の前の彼にもう既に、敵う気などしないほどに。
「………それも、勿論あります」
今のわたしには、こう言う他なかった。どこか疑うような視線を感じながらも、わたしはそれを押し通したのだ。
「まぁそっか。色々あるよね、思春期だし」
五条悟はそう言ってまた笑った。わたしはそれには同意しなかったが。
あぁ、でも。と思いついたように彼が顔を上げる。少しだけ、自分の肩が跳ねたのがわかった。
「三重高専って、知ってるとは思うけど支援学校だから。結構問題児多いと思うけど、気をつけてね」
「あ………はい。わかりました」
半ば拍子抜けしてそう返したわたしに、うんうん、と満足そうに頷いた五条悟は、すくっと無造作に立ち上がった。
「じゃ、言いたいことは言ったし渡したい物も渡せたし、僕もう行くから」
バイバイ〜。最初のようにひらひらと手を振ったかと思うと、彼は脈絡もなく無表情になって、まだ座ったままのわたしの肩に手を置いた。
え、状況を理解するより先に、全身の血が凍りつくような、低い声がわたしの耳を貫き、反響した。
「あんまりおいたしちゃダメだよ。三重高専の子供たちは強いからね?」
「ッ、」
おいた。その言葉が、何をもって彼の唇からこぼれたのか、わたしは知るよしもなかったが。
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星音(プロフ) - かくも。さん» Ifでも泣いちゃいますよ。なりチャでも死んでたら号泣ですね。ほんとifでよかった。はい、これからもよろしくお願いします! (1月2日 13時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - 星音さん» コメントありがとうございます。Ifとはいえ、一回書いてみたかったんですよね………そう言って頂けて嬉しいです、成りチャなどではまだ生きてますので、これからもよろしくお願い致します! (1月2日 12時) (レス) id: 447326c752 (このIDを非表示/違反報告)
星音(プロフ) - 星来ちゃんが、死んじゃった……。泣けない鈴の代わりに私が沢山泣いちゃいました (1月2日 10時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - jyudo0517さん» こちらこそありがとうございます……!奈穂ちゃんと星来には普通の女の子としていっぱい喋って頂きたかったので、いっぱい話してもらいました!笑 こちらこそ、これからもよろしくお願い致します! (12月29日 19時) (レス) id: 2246c6766d (このIDを非表示/違反報告)
jyudo0517(プロフ) - 奈穂が話してる………!(感動)ありがとうございます!!解釈一致です!!これからもよろしくお願いいたします!! (12月29日 19時) (レス) @page40 id: e508273c49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かくも。 | 作成日時:2023年11月4日 19時