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彼方へ ページ49

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目が覚める。


 






見渡してみると、ずいぶんと見知らぬ場所だった。

あぁ、そういえばわたし、死んだのか。


なんだか現実味のないことが一気に思い起こされ、つい頭を掻いた。



どうして死んだのに、こんなところにいるんだろう。

死後の世界だなんて全く信じていなかったけれど。まぁ、呪霊が存在する世界なら、あってもおかしくはないが。




本当に見覚えのない場所だったが、どうやらここは空港のようらしい。







死んだんだなぁ。改めて、その実感がふつふつと湧いてくる。



なんで死後の世界が空港なのかはよくわからないが、新しい人生に飛び発つ的なことだろうか。


空港のイスに腰掛けて、そんなことを考える。





死ぬのって、意外と暇なんだな。とか突飛なことを思いながら、何気なく目を閉じてみると―――






「おい」



頭を軽く引っ叩かれた。




低く、通る声。誰だ、死人仲間?


そんな風に思って、そのままの体勢で目を開ける。すると、そこには久し振りに見る顔があった。



「……………禪院、甚爾」

「お前、なんでその呼び方なんだよ。昔みたいに普通に呼べよ」

「…………クソ甚爾」

「…………いや、確かに昔呼ばれてたけど。そこは甚爾さん、だろ」



目の前の椅子に乱暴に、伏黒甚爾が腰掛ける。まじで10年振りくらいに会った気がする。一切変わらない容姿だが。



「で?どうした。ここはお前が来る所じゃねーぞ」

「来る所やわ。だってわたし死んだし」

「……………へぇ。ヘマしたな」

「おん」


昔の癖で、つい関西弁が出てしまう。でももう、気にしなくていいのだ、死んでるんだから。


ニヤニヤした顔で、甚爾がこちらを見てくる。特級様が何してんだよ、と甚爾はこぼした。




「なんでわたしが特級って知ってんの?」

「死人の特権。覗き見し放題だからな」

「…………はは、うける。そりゃええわ」



死ぬのも悪くない。そう思ったその時、ふいに大きな手が、わたしの頭の上に乗った。



「…………なに?」

「今まで、よく頑張ったな。お疲れさん」

「……………どーも」



言うほど頑張ってなんかない。そう言おうとしたけど、出なかった。

代わりに出たのは、また涙。そして笑顔。







あぁ、きっと。これから三重高専のみんなは進んでいくのだ、未来に向かって。
 

 




ならば北へ。



わたしはいつまでもそばにいよう。
 
 






 
彼方になるまで。

















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星音(プロフ) - かくも。さん» Ifでも泣いちゃいますよ。なりチャでも死んでたら号泣ですね。ほんとifでよかった。はい、これからもよろしくお願いします! (1月2日 13時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - 星音さん» コメントありがとうございます。Ifとはいえ、一回書いてみたかったんですよね………そう言って頂けて嬉しいです、成りチャなどではまだ生きてますので、これからもよろしくお願い致します! (1月2日 12時) (レス) id: 447326c752 (このIDを非表示/違反報告)
星音(プロフ) - 星来ちゃんが、死んじゃった……。泣けない鈴の代わりに私が沢山泣いちゃいました (1月2日 10時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - jyudo0517さん» こちらこそありがとうございます……!奈穂ちゃんと星来には普通の女の子としていっぱい喋って頂きたかったので、いっぱい話してもらいました!笑 こちらこそ、これからもよろしくお願い致します! (12月29日 19時) (レス) id: 2246c6766d (このIDを非表示/違反報告)
jyudo0517(プロフ) - 奈穂が話してる………!(感動)ありがとうございます!!解釈一致です!!これからもよろしくお願いいたします!! (12月29日 19時) (レス) @page40 id: e508273c49 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かくも。 | 作成日時:2023年11月4日 19時

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