【三重高専】【派生作品】制御不能なきみたちへ

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彼がそう言う。瞬間、縛られていたような感覚がふわりと消えて、元のニュートラルな状態に戻った。




手をぐー、ぱー、と動かしてみる。術式が、使える。

試しに懐鋳の鉛盤の針を巻き戻してみた。残念ながら呪具は使えないようだ。舌打ちをしたい衝動に駆られるが、もはやそれすらも出来ないほど、わたしは心身ともにボロボロだった。



この呪力量だと、反転術式、2回分程度だ。





…………………でも、領域展開は、一度だけ、出来る。











自分でも、自嘲して、殺してやりたくなった。やっぱりここでも、笑みが漏れてしまう。

あぁ、ほんとうにバカだ。わたしはこんなにやられてもまだ、こんなことを考えている。


「…………星来？」


奈穂ちゃんの、心配そうな声が漏れる。あぁ、きっと、気付いているんだろうね。奈穂ちゃんは、わたしの親友だから。大好きな人だから。




反転術式を今使ったとしても、きっと、目の前のこいつには勝てない。

ニタニタ笑う顔と目が合う。彼はどこまでも飄々としていて、きっと、この期に及んでまだわたしが、彼を祓おうとしていることなど、まるで思っていないのだろう。





ふと、血が器官に詰まって、咳が漏れてしまう。


「ッ、ゲホ、っゴホ、ッ」

「あーあ。ボロボロじゃん。ほら早くしないと！俺の気は長くないよ」


どこまでいっても呪いだから。きっと人間のわたしが、ほんとうの意味で敵うことなんてない。





それでも。


　





　



今ここで反転術式をしたら、目の前のこいつには、一生勝てないのだ。

　

　

　
　
　
　

　
「…………ごめんね、」




誰への謝罪なのだろう。


わからない。ひとつもわからないけれど、でも。

　
　




ただひたすらに。

　

　

　
　

　
　
「―――――――――わたしの信条は、『死んでも勝つ』、なんだよ………！！！」





　

　
　

　
勝ちたい。


　
　
　

　
　

　
　

　

　
　
　

　
　
「領域展開 射影画欧(しゃえいがおう)」

　
　

　
　
　

　
　

　
　
　

　
　
　

　
　
　

記憶が奔る。

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