└ ページ45
取り敢えず、血が滴るのをそのままに、術式なしで呪霊に蹴りかかってみる。
どうやら呪力だけは纏えるようだが、今日の任務からろくに補給もしていないので、大した量ではなかった。人型呪霊にすぐに避けられ、脚を掴まれる。
「っ、はなせ、」
「やーだよ。あはは、もうすぐで死んじゃうねぇ、」
そう言いながら、わたしの脚を関節と真逆の方向に思いっきり曲げた。
悲鳴すら出ない。痛すぎて。断末魔もろくに上げられないほどわたしは衰弱しているらしく、脚を折られてそのまま、地面に倒れ込んだ。
と、すかさず顔面に入ってくる、呪力を最大限に纏った蹴り。
軽く5mは吹っ飛んだだろうか。脚が折れているので上手く起き上がれずに、顔からは鼻血がポタポタと垂れた。
地面を見つめる。勝てなくて笑えてくる。もうやめたいのだ、何もかもを。
三重高専の皆は、固唾を呑んでこちらを伺っている。傘屋先輩は依然吐いており、如月先輩に背中をさすられていた。
それでもプライドとは皮肉なもので、折れた脚を引きずりながら無理矢理に立ち上がり、走って、呪霊との距離を詰めた。
呪霊の顔を殴ろうとする――――――が、呆気なく避けられ、腕の関節を外され、脱臼させられてしまった。
おまけに、傷口である腹を蹴られ、また吹っ飛ぶ。
意地を張ってなんとか立ち上がってみるも、もうふらふらで、話にならなかった。無意識に息も上がっているし、もうすぐで呪力も底をつく。
はは。また漏れる笑み。意味もないのに漏れてしまう。どうしてこんなに勝てないんだろう、なんでわたしは、こんなに弱いんだろうなぁ。
地面を見つめる。涙が出てきそうだったが、特級であるわたしが泣くわけにはいかない。無理に唇を強く噛んでぎゅ、と堪えたら、今度は唇からも血が出てきてしまった。
ほんとうに、笑えてくる。なんで、なんで。
「わたしの術式は、投射呪法、っ。1秒間を、24フレー、ムに、わける、術式、ッ、触れたものも、同じ動きを、するひつよ、うがあって、しっぱい、すると、1びょう、フリーズ、する、ッ」
ここまで打ちのめされてまだ、術式の開示を行うわたしは馬鹿で、阿呆だ。みんなに言われてきた。ほんとうに、ただの馬鹿。
すると、
「……………いいよ。君が可哀想だから、一回だけ術式を使わせてあげる。反転術式、使いなよ」
目の前の人型呪霊が、にこにこと笑みを浮かべて、そう言い放った。
11人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星音(プロフ) - かくも。さん» Ifでも泣いちゃいますよ。なりチャでも死んでたら号泣ですね。ほんとifでよかった。はい、これからもよろしくお願いします! (1月2日 13時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - 星音さん» コメントありがとうございます。Ifとはいえ、一回書いてみたかったんですよね………そう言って頂けて嬉しいです、成りチャなどではまだ生きてますので、これからもよろしくお願い致します! (1月2日 12時) (レス) id: 447326c752 (このIDを非表示/違反報告)
星音(プロフ) - 星来ちゃんが、死んじゃった……。泣けない鈴の代わりに私が沢山泣いちゃいました (1月2日 10時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - jyudo0517さん» こちらこそありがとうございます……!奈穂ちゃんと星来には普通の女の子としていっぱい喋って頂きたかったので、いっぱい話してもらいました!笑 こちらこそ、これからもよろしくお願い致します! (12月29日 19時) (レス) id: 2246c6766d (このIDを非表示/違反報告)
jyudo0517(プロフ) - 奈穂が話してる………!(感動)ありがとうございます!!解釈一致です!!これからもよろしくお願いいたします!! (12月29日 19時) (レス) @page40 id: e508273c49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かくも。 | 作成日時:2023年11月4日 19時