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ほとんど動けていない特級呪霊の攻撃を流しながら、わたしは虎杖さんの戦闘を見ていた。
3級呪霊に、呪具で斬りつける。反撃しようとする呪霊の拳も、呪具で斬ってしまった。
続いて、4級の背後に回り蹴りを入れ、顔に刀を刺す。
蹴りかかってくる攻撃には、棒高跳びの背面跳びのようにして避け、虎杖さんは呪霊の頭にかかと落としを入れた。
そして、ダメージを負った3級、4級呪霊ともまとめて、呪具で胴体を切断し祓ってしまう。
流れるような所作だった。思わずわたしが見入ってしまうほどに。
一体どれだけ身体が柔らかいのだろうか。呪具がなくても、普通に殴っただけで呪霊は悶絶していたし、蹴りが入った時なんかは、もうそのまま祓われてしまうのではないかと言うほど、咆哮を上げていた。
やっぱり、フィジカルギフテッドは凄い。わたしは同じ天与呪縛である真希さんの顔を思い浮かべ、彼女の昇級を妨害している禪院家に向けて、ため息をついた。
――――――あぁ、そうだ。そういえばあの男も、
彼女の戦闘に見入って、考え込んでしまったせいなのか。わたしは全く気が付かなかった。
喉が潰れたような声で呪霊が呪詞を唱えた特級呪霊の変速が解かれていたことも、その呪霊がわたしに向かって手を伸ばしていることも、虎杖さんがわたしを見ていたことも。
油断。それだけだった。
「――――――星来!!、危ない!!!」
え。
わたしがそう思った時には、もう遅かった。最大の呪力を込めて伸ばしていた呪霊の手が、虎杖さんの腹部を貫通していた。
鮮血が飛び散る。虎杖さんがなぜか、わたしの目の前に立っていた。
「…………な、で………………?」
なんで、と言いたかったが、声は掠れて床に落ちる。「うぐ、ッ、」という声を漏らして、虎杖さんがお腹を抑えてうずくまった。
いまだにあんまり状況が理解出来ていないわたしは、目の前の特級呪霊に爆速で距離を詰め、そのまま触れて反転術式を流し込み、無理矢理祓った。
そして、虎杖さんに駆け寄る。
なんで。ともう一度言った。なんで助けたの?と。
すると、虎杖さんは痛みに耐えながら、それでも笑顔で言ったのだ。
「星来ちゃんの方が強いのは知ってるし、分かってるの。でもね、それでも星来ちゃんが傷つくなんて間違ってる。」
監視役・禪院星来から親友・虎杖奈穂。あなたへ。
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星音(プロフ) - かくも。さん» Ifでも泣いちゃいますよ。なりチャでも死んでたら号泣ですね。ほんとifでよかった。はい、これからもよろしくお願いします! (1月2日 13時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - 星音さん» コメントありがとうございます。Ifとはいえ、一回書いてみたかったんですよね………そう言って頂けて嬉しいです、成りチャなどではまだ生きてますので、これからもよろしくお願い致します! (1月2日 12時) (レス) id: 447326c752 (このIDを非表示/違反報告)
星音(プロフ) - 星来ちゃんが、死んじゃった……。泣けない鈴の代わりに私が沢山泣いちゃいました (1月2日 10時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - jyudo0517さん» こちらこそありがとうございます……!奈穂ちゃんと星来には普通の女の子としていっぱい喋って頂きたかったので、いっぱい話してもらいました!笑 こちらこそ、これからもよろしくお願い致します! (12月29日 19時) (レス) id: 2246c6766d (このIDを非表示/違反報告)
jyudo0517(プロフ) - 奈穂が話してる………!(感動)ありがとうございます!!解釈一致です!!これからもよろしくお願いいたします!! (12月29日 19時) (レス) @page40 id: e508273c49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かくも。 | 作成日時:2023年11月4日 19時