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目を伏せる。すると、九十九由基に声をかけられた。
「君も参加するんだろう?死滅回游に」
当然かのように言う彼女に、言葉がつまった。参加するつもりではいるが、正直なにも、する気が起きない。
返答に困るわたしに、同じく特級呪術師である乙骨憂太が、声をかけてくれた。
「強制じゃないよ。特級だからって参加義務があるわけじゃない。禪院さんは、少し安静にしてたほうが良さそうな気がする」
隈のひどい、ベタ塗りの瞳に見つめられ、息が漏れた。みんなが、こちらを心配そうな顔をして見つめている。
彼らは乗り越えたのだ。知人の死を、友人の死を。
それでもまだ、奥之手さんが死んだあの時のことが、フラッシュバックする。
あの時、何も出来なかった。彼女に助けられただけ。何が特級だ、ばかばかしい。
彼女のことがあったのに、まだ、あの男のする事に関われるのだろうか。
顔を上げて、恵くんを見る。わたしは、何かを言って欲しかったのかもしれない。
「………俺は、星来の判断に任せる。強要も辞めさせもしない。星来が、後悔しない道を選べ」
あぁ、思わず笑みがこぼれてしまう。だってね、そう言うと思ったの。
優しいから。どうせなら強要してくれた方がまだ良かった。だって、泣きそう。
でも、ここまで言わせたくせに参加しないだなんて、今度こそほんとうに何も出来なくなってしまう。
だから。
「…………参加します」
皆が、各々の反応を示す。恵くんや九十九さんは頷いている。
乙骨先輩が、心配そうに話し掛けてくる。
「……大丈夫?無理は禁物だよ。辛かったら、すぐに言ってね」
「大丈夫です。奥之手さんに何も出来ないままじゃ、そっちの方がつらいですから」
わたしの言葉に、乙骨先輩はまだすこしだけ心配そうにしていたが、やがて頷いてくれた。
奥之手さん。奥之手梢ちゃん。
わたし、頑張るから。沢山頑張るから。
今まで守ってくれてありがとうだなんて、それはこっちの台詞なのに、どうして。
"後は、お願いねー……?"
奥之手さん、何も出来なくてごめんね。でも、
「任せてね、梢ちゃん」
頑張るから、だから、見ていてくれる?
『星来ー……頑張れー……!』
奥之手さんを、殺した奴を、必ず
殺すから
ビ――――――
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星音(プロフ) - かくも。さん» Ifでも泣いちゃいますよ。なりチャでも死んでたら号泣ですね。ほんとifでよかった。はい、これからもよろしくお願いします! (1月2日 13時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - 星音さん» コメントありがとうございます。Ifとはいえ、一回書いてみたかったんですよね………そう言って頂けて嬉しいです、成りチャなどではまだ生きてますので、これからもよろしくお願い致します! (1月2日 12時) (レス) id: 447326c752 (このIDを非表示/違反報告)
星音(プロフ) - 星来ちゃんが、死んじゃった……。泣けない鈴の代わりに私が沢山泣いちゃいました (1月2日 10時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - jyudo0517さん» こちらこそありがとうございます……!奈穂ちゃんと星来には普通の女の子としていっぱい喋って頂きたかったので、いっぱい話してもらいました!笑 こちらこそ、これからもよろしくお願い致します! (12月29日 19時) (レス) id: 2246c6766d (このIDを非表示/違反報告)
jyudo0517(プロフ) - 奈穂が話してる………!(感動)ありがとうございます!!解釈一致です!!これからもよろしくお願いいたします!! (12月29日 19時) (レス) @page40 id: e508273c49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かくも。 | 作成日時:2023年11月4日 19時