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奥之手さんが首をかしげる様子を見て、五条悟がククッと喉を震わせて笑う。
「凄いよねぇ。純粋な特技だけでここまでのコピーを可能にするだなんてさ。他にはいないよ」
「当たり前です………そう何度もいられちゃ困りますよ…………」
「…………?おじさん、どうしたのー………?」
「おじさんじゃなくて"お兄さん"ね?あと僕教師だから」
奥之手さんの言葉に噴き出しそうになった。が、ジト目で五条悟が睨んでくる(ような気がする)ので、慌てて堪える。
「私………すごいー………?」
「うん。凄いよ。まだ呪術界に入ったばかりだから、鍛錬を積めば一級にだってなれる」
「わーい………褒められたー………えへへ、うれしー………」
くしゃり、と五条悟に頭を撫でられて、また微笑む。その表情は愛らしかった。
「私ねー………ヒーローに、なりたいのー……。だから、褒められるの、うれしー………もっと、頑張るー………!」
小さな拳を握り、わたしたちに奥之手さんが笑いかけてくる。"ヒーローになりたい"。それは、この呪術界にいたらまず聞くことの出来ない、とても新鮮な言葉だった。
「みんなの事、助けられるようになるー………!強くなるんだー………」
間延びはしているし、穏やかな表情なのも変わりはないが、そこには確かな決意が宿っていた。
呪術師として、明確な目標を持っている。奥之手さんはやっぱり庇護対象なんかじゃない。ちゃんと、皆の事を守れる側の人間なのだ。
ふと、わたしに五条悟が笑いかけてくる。目隠しで瞳は分からないが、きっと穏やかな目尻をしているのだろうな、と想像がついた。
「どう?…………良いでしょ、梢」
「…………そうですね。こんなにふわふわしているのにこんなに心が強い人、今までで初めてです」
「ね〜。いやー、星来なら分かってくれると思ってたよ〜」
「…………!もしかして、その為に………?」
口角を上げたまま、聞こえない振りでニヤニヤする五条悟に、わたしは小さく睨んだ。
策士め………気付かなかったわたしも悪いけれど、この人の性格も悪い。奥之手さんが一緒にいて汚れないか心配だ。
五条悟は気付かせようとしていたのだ。奥之手梢は監視役の対象外だと。だから彼女の時のみ、わざわざ顔を出した。
「へへへー………星来、改めて、よろしくねー………」
笑顔の彼女を見て、ふっ、とわたしも、笑みがこぼれた。
監視役・禪院星来から要警護対象・奥之手梢。あなたへ。
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星音(プロフ) - かくも。さん» Ifでも泣いちゃいますよ。なりチャでも死んでたら号泣ですね。ほんとifでよかった。はい、これからもよろしくお願いします! (1月2日 13時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - 星音さん» コメントありがとうございます。Ifとはいえ、一回書いてみたかったんですよね………そう言って頂けて嬉しいです、成りチャなどではまだ生きてますので、これからもよろしくお願い致します! (1月2日 12時) (レス) id: 447326c752 (このIDを非表示/違反報告)
星音(プロフ) - 星来ちゃんが、死んじゃった……。泣けない鈴の代わりに私が沢山泣いちゃいました (1月2日 10時) (レス) id: ad93be62fc (このIDを非表示/違反報告)
かくも。(プロフ) - jyudo0517さん» こちらこそありがとうございます……!奈穂ちゃんと星来には普通の女の子としていっぱい喋って頂きたかったので、いっぱい話してもらいました!笑 こちらこそ、これからもよろしくお願い致します! (12月29日 19時) (レス) id: 2246c6766d (このIDを非表示/違反報告)
jyudo0517(プロフ) - 奈穂が話してる………!(感動)ありがとうございます!!解釈一致です!!これからもよろしくお願いいたします!! (12月29日 19時) (レス) @page40 id: e508273c49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かくも。 | 作成日時:2023年11月4日 19時