は じ め ま し て 、 化 物 で す 。

化物と名前 ページ16

Noside



本当にブラック本丸かと聞きたくなるほど
蔵のなかはほのぼのとしていた

しかし、その空気を変える一言が聞こえた



貴方「あの、」



それは、柚月の声だ



平野「どうかしましたか？」



貴方「やっぱり"主"って呼ぶのやめませんか？

私は、主と呼ばれるほどいい人でもないし、
先ずもって人間でないようなものです。
皆さんが主の呼んでくれるのは本当に
嬉しいのですが…」



今剣「じゃあ、
ばけものの"ほんとうのなまえ"はなんですか？」



貴方「えっ？」



今剣は柚月の手を握ってそう問う。



今剣「"あるじさま"がだめなら
なまえでよびます！

それならいいでしょう？」



こてんと首をかしげる今剣に賛同して
短刀たちが声をあげる



貴方「名前、ですか…私は、」



柚月は視線をさ迷わせて、三日月を見つける。
目があった三日月は大丈夫とでもいうように
ひとつ頷いた。

それによって決心した柚月は手を握る今剣と
その周りに集まる短刀たちに向けて言った。



貴方「私は、時雨柚月といいます。」



今剣「じゃあ、"柚月さま"ですね！」



自分の名前を久しぶりに言った柚月は、今剣に
早速呼ばれ、嬉しさで目を潤ませて、
泣きそうになった。



貴方「〜っ、はいっ…」



裏のない笑顔を初めて見た一同は
一瞬動きを止めた。



乱「主さんの笑った顔、可愛い！」



貴方「わっ」



飛び付いた乱を受け止めるが勢いを殺しきれず、押し倒される形になった。



今剣「ぼくものりたいです！」



"ばびゅーん"といいながら柚月の元に抱きつく
今剣を先頭に次々と短刀達が柚月に飛び付く。
五虎退の虎は柚月の顔をペロペロとなめる。



貴方「あのっ、皆様っ、？
ちょっ、ひぁっ、くすぐった…」



薬研「おーい、その辺にしておけよー」



厚「大将、大丈夫かぁー？」



貴方「は、はいぃー…」



短刀の兄貴分とも呼べる薬研や厚は
声をかけながらも止めるつもりはないらしい。



三日月と柊は少し離れて、
柚月と戯れる短刀達を見ていた。



三日月「柚月の笑った顔を久々に見たな…」



柊「ええ、あの噂がたってから時雨様…柚月様は
笑わなくなりました。

私も久々に見れて嬉しい限りです。」



あの噂がたってから柚月が笑わなくなり、
壊れはじめるのを一番近くで見てきた柊は
目の前で短刀達と笑う柚月を見て、
"この笑顔がもう消えないことがないように"と
密かに願うのだった。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

←化物と主

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す