綺麗がはちじゅう、みっつ ページ35
二学期になった。
「端山さんは、大学どこに行くんですか」
昼休みの図書室、向かい側に座る佐久早くんがふと呟いた。私はとりあえず第一志望校を口にして顔を上げる。
『埼玉の大学。一番やりたい事とマッチしてるのがそこだったから』
「埼玉……」
『…すぐ戻れる距離だよ』
ペンを止めた佐久早くんが心なしかしょんぼりしているように見えて、それが少し嬉しくて口角が緩やかに上がるのが分かる。
学年が一つ違えばこんな事があるのは分かりきっていた事で、私だって好きな人と離れるのは心苦しい。毎日会える訳じゃなくなって、気持ちが薄れる事態はどっちにだって有り得る。だから怖いんだ。
『佐久早くんなら大学側からスカウトとかいっぱい来そうだね』
「分かんないですけど……俺、遠距離とか嫌です」
『！』
「目移りとかして欲しくないし、てかそもそも会えないとかも無理だし、その……はぁ」
彼の耳が、次第に赤く染まっていくのが見えた。思わず私は口を開いてしまう。
『ほんとに好きなんだ……』
「は？」
低い声と共に睨まれて肩が跳ねる。慌てて弁明すると、珍しく姿勢を崩した佐久早くんが机に視線を落としながら不貞腐れたように話し始めた。
「俺だって分かんねぇし……他人に入れ込むとか、今まで無かったから。はぁ…端山さんが留年すればいい」
『無茶言わないでよ……』
「じゃあ俺も同じ大学にします」
『え……それって、大丈夫？』
「その大学、俺が興味ある学部あるみたいなんで」
いつの間に取り出したスマホで大学のホームページを開きながら佐久早くんは言った。私は文系、対して彼は理系。確かに文理融合の学部はあるけど、中々に難易度は高い。
「勉強のモチベーションならあります」
『……続くかな？』
「俺が嘘つきに見えるんですか」
『み、見えません…』
良いのかな、私の存在が彼の将来を左右するファクターになって。きっと佐久早くんは今後の試合でもっと活躍して、色んな所からスカウトが来る。大学だけじゃない、企業からだって。彼にとって一番良い環境を提供してくれる所に行くべきなんだろう。
でも……嬉しい、なんて。
『性格悪いなぁ私……』
「何か言いました？」
『いや。佐久早くんが後悔しない道なら、私も応援するよ』
臆病なくせに、佐久早くんの人生を欲してしまう傲慢な自分が居る。
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すみた先生(プロフ) - 魅亜羅さん» コメントありがとうございます！ちょっとずつ進めていこうかなと思っていますので、気長に待っていただけると有難いです🙏絶対完結させます！ (12月1日 21時) (
レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
魅亜羅(プロフ) - 佐久早の恋愛のお話好きで、とても引き込まれる作品です！更新楽しみに待ってます！ (12月1日 1時) (レス) id: 5c7231855f (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - モモさん» コメントありがとうございます！！気まぐれ更新でホント申し訳ありませんが、頑張ります！！ (2023年1月13日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - この話、めちゃくちゃ好きです！続きが気になりすぎるっっ。楽しみにしています！！ (2023年1月12日 21時) (レス) @page34 id: 759a61aa3f (このIDを非表示/違反報告)
雪音くん。 - すみた先生さん» 「大人編も見たい」って意見しかないですもんね笑私としても嬉しいです(*´ω｀) (2022年5月7日 21時) (レス) id: 07fdfe6512 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年1月15日 19時
