近い、落雷 ページ9
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「……わっ、」
急に開いたドアに
まず第一に、恐怖にも似た驚きが襲って。
すぐに解放された体。
…って、ﾁｬﾝﾐﾝ？！
視線の先にいる人影が誰だか認め
思わず飛び跳ねそうになった。
KH「あぁー…(笑)」
「ど、どうしてここに？」
ドアからは待合室の光が差し込み。
ﾁｬﾝﾐﾝの………"無"と言い表せる目が
ゆらりとこちらに向けられていて。
雨で濡れた髪が、黒く艶だっている。
CM「……なに、この部屋だけ停電でも起きた？」
あ。
その声を聞いて、気付いてしまった。
ﾁｬﾝﾐﾝが怒っている、と。
怒りが滲み出てる。
私達が何かを答えるよりも先に
ﾊﾟﾁﾝ…と部屋の電気を付ける、静かな動作にも。
ええと……
どこから。
何を弁明したら…。
KH「おばーちゃんに教わったの。
雷の時は部屋真っ暗にしろって。」
CM「お前は黙れ。」
KH「ほら。俺、雷ダメじゃん？
何かに抱きついてないと震えちゃうんだよね。」
CM「あぁ？ 雷鳴るとわくわくするって飛び跳ねてたのはどこの誰だ？」
二人のやり取りを、瞬きをしながら聞くだけの私。
そして。
ﾁｬﾝﾐﾝは、ふっと私に視線をやると
「あなたは一体何してるんですか」と、ひやり冷たい声。
「え、と……その…」
CM「聞こえなかった？
あなたはここで、何してるんですか。」
実を言うと……
ﾁｬﾝﾐﾝが私を呼ぶ時の"あなた"が、私は好きで。
ふわっと柔らかく耳に届くし。
ﾁｬﾝﾐﾝが私を、年上の彼女として愛おしんでくれている事が、深く伝わるから。
だけど。
今のそれは、間違いなく他人行儀なもの。
って、そんな事は置いといて。
ど、どうしたら…。
KH「ああ〜…ﾁｬﾝﾐﾝ君。一応言い訳するとね、」
CM「だからお前には聞いてない。
…もういい、分かった。Aさん、送るから。」
「は、はい…！」
ﾁｬﾝﾐﾝが背中を向けて。
追うようにドアまで行くと
ふっと思い出して、ｷｭﾋｮﾝ先生に深く頭を下げた。
KH「…ごめんね(笑)」
先生は、やっと私に届く小さな声でそう言うと。
早く行きな、とドアの向こうを指差す。
CM「……これじゃ傘さしても意味ないな。」
後ろ姿からでも。
ﾁｬﾝﾐﾝが溜息をついたのは
その、上下した肩で分かった。
それから、車の中で気付いた事は……
目に見える感情的な怒りではなく。
淡々とした冷静な怒りが、一番怖いという事。
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作者名：りんこ
| 作成日時：2015年11月5日 21時
