過保護な彼氏 -CM・YOU- ページ8
-CMside-
CM「……………」
…やっぱり出ないか。
狂ったように降り始めた雨は
まさに帰宅時間を狙った20時からで。
ふっと。
最後の予約を終えると、Aさんの事が頭をかすめた。
電話に出ないって事は、この雨の中帰ってる？
いや、まさか。
CM「…寄ってみるか。一応。」
Aさんには、よく過保護だと困った顔をされる。
いい大人なんだから心配しないでいいんだよ。
余りにひどい雨ならタクシーで帰るから、と。
それでも…
心配は勿論だけど、会える理由になるならそれでいい。
そう思ってるワケで。
月水以外を担当してるカウンセリングルームから
S・J心療内科までは、車で30分も掛からない。
窓を叩く雨は、強くなる一方で。
ワイパーが気休めな程。
CM「…あ、まだいる(笑)」
赤茶色のレンガを照らすオレンジのライトが
付いたままだったから。
来て良かった。
これからはちゃんと携帯を見るように注意しておこう。
そう呑気に思いながら、エンジンを切った。
────────
「…せ、先生。」
KH「大丈夫。怖くない怖くない。」
「あの、離してください。困ります。」
KH「じっとしてないと雷落ちちゃうよ？」
「い、意味分かりません…」
あやすような声が頭上からして…
苦しくなった私は息を吸うけれど。
その香りが当然だけどﾁｬﾝﾐﾝとは違い。
私は今、ﾁｬﾝﾐﾝ以外の男性に抱き締められているのだという急な実感に、頭がクラクラした。
KH「あー…落ち着く。」
「……ｷｭﾋｮﾝ先生が怖いだけでは。」
KH「正解(笑) 雷と毛虫だけは、小さい時から怖いの。」
雷と毛虫？
子供みたい…(笑)
潰された胸の中でくすくすと笑うと
先生も同じように笑い、振動が伝わる。
KH「…Aさん。俺にもね、心療内科医を志した理由はちゃんとあるんだよ。」
…………。
不意に、ゆったりと柔らかい声。
ｷｭﾋｮﾝ先生が言った言葉に
「ちゃんと分かっています」と頷き。
話を聞き終わるまで、もう少しこのままでいようと思った。
KH「でも、患者に手を出すようなヤブ医者が何を語っても説得力はないでしょう(笑)」
「そんな、」
ｶﾞﾁｬ…
言い訳ではないけれど。
強過ぎる雨風と、ただでさえｷｭﾋｮﾝ先生に抱き締められて、平常ではなかったから。
ドアが開く音がするまで
私はすっかりその気配にすら気付いていなかった。
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作者名：りんこ
| 作成日時：2015年11月5日 21時
