目が眩むほど -CM- ページ40
-CMside-
ｶﾞﾁｬ…
「ち、ちょっと帯緩めてくるね。
というか、着替えてきちゃうね。」
CM「や……それは待って下さい。出来れば浴衣のままで。」
まだ勿体ない。
もう少し、Aさんの浴衣姿を見ていたい。
なんて。
それこそ無理強いだと思ったけど
Aさんは頷いて、洗面所に消えた。
ﾄﾞｰﾝ……ﾄﾞｰﾝ…
リビングの電気は付けずに。
廊下の明かりだけで、奥の全面窓に近付く。
すげえ…。
これなら、暑苦しい外で人にまみれて見るより満喫出来る。
ん…？
ずっと見ていなかった携帯を見ると
ｷｭﾋｮﾝからメールがきていて。
『やべー！花火やべー！ﾁｬﾝﾐﾝ君見てるー？』
…(笑)
「見てる。これやばい。」と返す。
Aさんと一緒だよ、と返さない事が
せめてもの僕のセーブだと思えた。
ｷｭﾋｮﾝ。
今、Aさんと一緒だよ。
悪いけど……ずっと、この先も僕の彼女だよ。
ｶﾞﾁｬ…
「あっ…もう始まってるんだね。」
顔を覗かせたAさんは
暗くてその顔色までは判断つかない。
だけど……
清潔に着こなされた浴衣は
彼女を、通常よりも女性らしく魅せる。
いつも通りの眼鏡姿だとしても。
CM「気分はどうですか。」
「恥ずかしながら、胸の圧迫を緩くしたら良くなりました。」
CM「んだよ、人騒がせ(笑)」
ごめんね、と微笑む彼女が僕の隣まできて。
窓に両手をつけて、夜空を見上げた。
「……緑色が、いいな。」
CM「………」
「あ……ハート。もう一回…」
ねえ。
Aさんの中で……
あの日のｷｭﾋｮﾝとのキスは、どう消化されてますか？
もう、過去になってる？
それとも、たまに思い出したりする？
僕には推し量るしか出来ないけど。
可能なら……綺麗に忘れちゃって。
花火を瞳に映している視界を遮るように。
Aさんを覗き込んで、唇を重ねた。
CM「…花火に夢中になり過ぎ(笑)」
重い想いを隠すように
僕の口から出るのは、笑い混じりの言葉だけど。
あの日のキスが霞むくらい。
そのくらい、僕が濃密な時間をあげ続けるから。
「……うん。なんだか、幸せだね。」
ぽつりとAさんが呟く。
僕もです。
僕も、幸せですよ。
心の中でそう頷きながら。
目が眩む。
遠くで散る花火は切なく綺麗で…
僕の視界が、薄っすらと涙でぼやけた。
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作者名：りんこ
| 作成日時：2015年11月5日 21時
