お薬は甘い優しさで ページ39
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会場の河原までは、駅から歩いて15分。
同じ流れで歩く人達と同じペースで。
はぐれぬように進んでいく。
………。
あ、れ。
なんだろう。
なんだか……下腹部にもやもやした違和感があり。
嫌な冷や汗がこめかみから伝う。
そして、少しずつ息があがっている自覚があって。
CM「Aさん？どうかしました？」
「えっ…」
CM「話し掛けても上の空だから。足、痛い？」
わぁ、優しいな。
それでも。
ﾁｬﾝﾐﾝの優しさにうっとりする余裕もなく
「ちょっと、ごめんね…」とコンビニの前で立ち止まった。
「き、気分が良くないかも、しれない。」
CM「いつから？」
「さっき。帯、強く締め過ぎたかな。あと寝不足も…」
CM「……顔色、良くないですね。
それじゃ、この人混みはキツいか。」
そして、ﾁｬﾝﾐﾝの心配顔。
明るく振る舞おうと「大丈夫だよ」と言うものの
ぐるぐると胃の不快感が増していって。
き、気持ち悪い…。
ﾌﾞｰﾌﾞｰ…
カゴのバッグで震える携帯に視線をやると
ﾘｮｳｸさんからのメール。
「ﾘｮｳｸさんだ。メール見てみるね。」
CM「ん。」
「えぇと……"Aぴょん今どこ？会場激混みで気分萎える。座る場所ないもん"………だって。」
ﾁｬﾝﾐﾝを覗うと。
眉を下げたまま、ふぅ、と息を吐いて。
CM「なら、どっちにしろゆっくり見られないから。
帰りますよ。あなたも無理でしょう。」
「…う、ん。」
CM「安心して。無駄に高い家賃の部屋から見る花火、けっこう綺麗なんです(笑)」
ああ……なんで事だ。
せっかくの気合の入れた
浴衣での花火大会デートだったけれど。
だけど…
どっと押し寄せる人波を見ていると
とてもじゃないけど、耐えられそうもなくて。
そして。
マンションに到着して
エレベーターの中で、ﾁｬﾝﾐﾝが私の髪に撫でるように触れた。
CM「…すみません。
浴衣、僕が無理強いしたからですよね。」
「そうじゃないよ。私も着たかったから。」
どこか、いつもよりも甘いﾁｬﾝﾐﾝ。
髪に触れる指も、声も。
私に接する空気の全てが。
CM「でも……本気で綺麗です。今日で惚れ直したかも。」
変なﾁｬﾝﾐﾝ。
もっと、クールで冷たいくらいのﾁｬﾝﾐﾝに慣れているのに。
私の体調が優れないからか。
浴衣を着ていった効果もあるのか。
そんなﾁｬﾝﾐﾝに戸惑って
ありがとう、と呟いて俯いた。
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作者名：りんこ
| 作成日時：2015年11月5日 21時
