魅力3倍増し ページ38
・
*
悩んだ末に選んだのは
藍色の浴衣に、アジサイが咲いているもので。
ﾁｬﾝﾐﾝの好みであろう
落ち着いていて、清潔感のあるデザインだと思う。
「上出来っ…！」
浴衣を用意してから、毎日練習した着付け。
ひもを帯に入れ込んで…
姿見鏡で細部まで最終チェックをして…
待ち合わせは18時。
念の為余裕を持って出よう、と。
どこか浮かれ気分のまま下駄を履いた。
*
「ﾁｬﾝﾐﾝ。」
その声に顔を上げて。
私の……きっと、浴衣を目に留めたﾁｬﾝﾐﾝが
少しだけ目を大きくした。
浴衣に精一杯で
お化粧や髪の毛にまで気を回せなかった事を後悔しながら。
ﾁｬﾝﾐﾝを窺うと、薄く開いた唇が柔らかく微笑んでる。
CM「浴衣、似合ってます。」
「そう、かな。」
CM「ええ。僕がAさんに着て欲しかった浴衣のイメージ通り。」
「…ありがとう。」
うん、とﾁｬﾝﾐﾝが頷いて。
私も同じように頷いて。
なんだか……
初デートのような気恥ずかしさが私達を包み込む。
正確に言うと、私とﾁｬﾝﾐﾝの初デートは、そんな気恥ずかしい空気にはならなかったのだけれど。
CM「足、靴擦れする前に教えて下さい。」
「うん。絆創膏、持ってるよ。」
CM「…(笑) じゃ、行きましょう。」
薄明るい空には、まだまだ花火は映えそうもなくて。
少しずつ暮れていくのを想像すると
子供のようにﾄﾞｷﾄﾞｷと胸が高鳴った。
ｺﾂ…ｺﾂ…
少し経って、思い直したように手を差し出すﾁｬﾝﾐﾝ。
その手を黙って握る。
ﾁｬﾝﾐﾝは、指を握る力をきゅっと込めると
私をすぐ隣に引き寄せた。
CM「……すげえ人。暇なんですね、皆。」
「…ふふ(笑)」
CM「なに？」
「ううん。みんな、暇なんだね。」
私は分かってる。
淡々と喋ったﾁｬﾝﾐﾝの、今のは照れ隠しだと。
そして。
私に気付かれたのだと気付いたらしいﾁｬﾝﾐﾝが
隣で困ったように笑って。
「Aさんに見透かされるなんて心外…(笑)」と溜息をついた。
CM「Aさん。今日、泊まってく？」
「あっ、うん。そのつもりです。」
CM「…そ。」
ﾁｬﾝﾐﾝの顔を見上げると
この蒸し暑さを感じないくらい、涼しげ。
背、高いなぁ。
30センチの身長差は大きいなぁ。
ふと、今更ながらそんな感想が浮かんで。
握られていた指を解くと。
ﾁｬﾝﾐﾝの腕に寄り添うように、そっと腕を絡めた。
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作者名：りんこ
| 作成日時：2015年11月5日 21時
