雷雨 ページ4
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*
「…よし。今日も頑張った。」
金曜は20時まで診察をしていて。
クリニックの受付をしていた私は
ｷｭﾋｮﾝ先生がいる診察室のドアをノックした。
ｶﾞﾁｬ…
「お疲れ様です、ｷｭﾋｮﾝ先生。」
KH「ああ、お疲れ様。
珍しいですね、Aさんから俺を訪ねるなんて。」
冷房が強めの室内。
ｷｭﾋｮﾝ先生はカルテから視線を上げて、私に微笑むけれど。
やっぱり。
その笑顔はどこか他人行儀で…
ミュージアム以降、親しくなれたと思ったのに。
ｷｭﾋｮﾝ先生は油断するとすぐに距離が離れてしまうのだと
薄っすらと淋しさを感じた。
「あの……旅行で摘んで帰ったブルーベリーでジャムを作ったので。良かったら。」
KH「俺に？くれるの？」
「はい、是非。甘さ控え目です。」
時間を掛けて煮詰めたジャム。
明日はスコーンを作ってﾁｬﾝﾐﾝと食べる予定で。
ﾁｬﾝﾐﾝは「待ち切れない」と、昨夜電話で言っていた。
KH「さすがAさんですね。どうもありがとう。」
ｷｭﾋｮﾝ先生に紙袋を差し出し…
それが受け取られた瞬間、唐突に雷が鳴った。
ﾄﾞﾄﾞﾝ…と、肩が震える程の低い雷が。
「わ……びっくりしたぁ。近かったですね。」
KH「うん。雨、これから強くなる一方ですよ。」
そうか…。
困ったな。
雷の中、駅まで歩く道のりは物凄く怖い。
そう思いながら。
顔を上げた先に、ｷｭﾋｮﾝ先生が私を見ていて。
車で送りますから、と。
当たり前の事のように微笑んで言った。
「あ。いえ、大丈夫です。」
KH「でも、さすがにこの雨と雷じゃ心配だし。」
「落ち着くまで待ちます。」
あまり、好意に甘えてはいけない。
前に、ｷｭﾋｮﾝ先生に送ってもらった事を
ﾁｬﾝﾐﾝはよく思っていなかったから。
それに……
ｷｭﾋｮﾝ先生に親切にしてもらうと、きっと誤解を招く。
あの、電話の女性のように。
KH「…(笑) 今日は頑固なんですね(笑)」
「……すみません。」
KH「なら……俺も一緒に待ちますよ。それならいい？」
「……………」
少しの沈黙の後。
ｷｭﾋｮﾝ先生は苦笑しながら
「俺もずいぶん警戒されちゃったな…」と呟いた。
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作者名：りんこ
| 作成日時：2015年11月5日 21時
