ただ現実的に -CM- ページ29
-CMside-
*
疑ってるんじゃない。
怖い……というのも違う。
ずっと、Aさんを見ていれば分かる。
彼女は簡単に僕から離れたりしない。
決して自分自身に自信があるからじゃなくて。
Aさんという人が、些細な事で心変わりをする人間じゃない、という確信があるから。
きっと、僕と生涯を添い遂げる程の真剣さで
付き合ってくれてる。
四六時中僕のことを考えてる訳ではなくても。
それでも、深い愛で僕を好いてくれてる。
そんな事は、ちゃんと分かってる。
*
ｺﾄﾝ…
ん…
静かな物音で、ふっと眠りから覚めた。
夢の中でもAさんの事を考えていた気がするけど。
そんな、恋愛ばかりになってる自分が嫌で、寝起きから溜息をついて。
「あ、おはよう。もう8時だよ。」
CM「…ん。おはよ。」
すっぴんにいつもの眼鏡で。
淡いグリーンの生地に、大きな黄色の花柄のエプロン姿。
あれ……前から持ってたっけ？
そんな事をベッドの上で考えていると
Aさんが僕の視線に気付いて。
「昨日、映画の後にﾘｮｳｸさんと買ったんだよ」と微笑んだ。
「どうかな？ちょっと、私には派手かな。」
CM「んー…地味な顔が華やいでいいんじゃないですか？」
「し、失礼な。」
CM「…(笑)」
それからすぐに、テーブルに朝食が並んで。
おくらと大葉がのった冷奴。
実家から送られてきたという、えぼ鯛の干物。
わかめとネギの味噌汁。
梅干しがちょこんと添えられたお茶漬け。
CM「相変わらず凄いですね…(笑)
毎朝こんなちゃんとしたの作ってるんですか。」
「いつもじゃないよ。お味噌汁は欠かせないけど。」
CM「…ん、うまい！」
Aさんが作った朝ご飯は
そのまま彼女の人柄が現れていて。
優しくて。
「ﾁｬﾝﾐﾝ。夏バテで食欲が無くてもきちんと三食食べてね。おかず作ったら、タッパーに詰めて持っていく？」
すっと胸の中に沈むわだかまりが軽くなる。
この人が、好きだな。
今でも……
嫌という程、脳裏にこびり付いてる昨夜の光景とか。
僕に何も話さないAさんの気持ちとか。
ｷｭﾋｮﾝの本心とか。
そんな事、どうでもいいと思いたいくらい
Aさんが好きなんだよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りんこ
| 作成日時：2015年11月5日 21時
