水色のカルテ５ (ページ12)

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着信ページ12

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*

　「……ふぅ。」

40度に設定されたお湯に、肩までたっぷり浸かり。
油断していたらのぼせかけ。

髪を乾かしてベッドにしゃがみ込むと
お腹の底から深い息が漏れる。

あの後、すぐにﾁｬﾝﾐﾝとは別れた。

「雨強いから見送らなくて大丈夫」だと言われたけど。
車がカドを曲がるまで、目で追って。

傘から落ちる雫が、ひたひたと鞄を濡らした。

　「……土曜、日曜………月曜。」

ぽっかりと穴が開いた心。

表現が正しいかは分からないけれど
さっきから私は"しゅん"としている。

とてもじゃないけど、すんなり寝付けそうもない程に。

やっぱり私は、ｷｭﾋｮﾝ先生と親しくなり過ぎていたのかな。

それはそうか。

いち受付である私が取るべき距離感は
もっと、違うものであるべきだった。

ﾘｮｳｸさんならきっと、今の私にこう言うと思う。

── だから言ったでしょ？
Aぴょんは、ﾁｬﾝﾐﾝさんの彼女だって自覚が足りな過ぎだよ？

…って。

ﾌﾞｰﾌﾞｰ…

ﾁｬﾝﾐﾝ？

ではなく、表示された名前はｷｭﾋｮﾝ先生で。

それを少しの間眺め……切られる前に出た。

　「はい。もしもし。」

KH『あ、こんばんは。』

　「……はい。」

ｷｭﾋｮﾝ先生の声に背筋が伸びる。

ごくんと、ツバを飲み込んだ。

"もう、私には構わないで下さい"

"電話もメールもしないで下さい"

"ﾁｬﾝﾐﾝにこれ以上誤解されたら困ります"

湯船の中で、言おうと決めた言葉たち。

どれも失礼極まりない。
ｷｭﾋｮﾝ先生からしたら、それこそ迷惑な話だろうけれど。

KH『さっきﾁｬﾝﾐﾝが部屋に来たんです。』

　「…そう、ですか。」

KH『玄関で奥歯吹っ飛ぶ勢いで殴られた。
僕、お父さんにも殴られた事ないのに…(笑)』

え、えええ…！
殴られた…？

　「だ、大丈夫ですか？
腫れてしまうから、氷で冷やして下さいね。」

ﾁｬﾝﾐﾝったら手荒な…。

想像……いや、とても想像出来ないけど。

それでも。

ｷｭﾋｮﾝ先生に向けた怒りは、同じだけ私への想いの現れなのだと、それも充分に分かって熱くなる。

KH『ありがとう。そうします。
Aさんは殴られなかった？』

　「ふふ、まさか…(笑)」

KH『だよね。それなら良かったです(笑)』

眠いのかな。

ｷｭﾋｮﾝ先生の声はどこかおっとりと響いて。
私まで、変に脱力してしまう。