07. クソガキ ページ7
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宏太「 落ち着いたか?」
「 …うん。ごめん、やぶ 」
宏太「 いい。気にするな 」
頭の上に乗せられる掌の温もり。
俺が彼から奪ってしまったものの1つだ。
戻らない時間と癒えない傷。
こんな顔、欲しくなんてなかったのに。
まだシュンとしてる俺を見かねてか、ただ自分の腹が減ったからかは分からないけど店員を寄越した薮が次々と食べ物を注文する。
( お飲み物はいかがなさいますか?)
宏太「 あー熱燗で。お前は?」
「 ウーロンハイ 」
宏太「 以上で。」
店員さんが出てった個室にまた静寂が訪れる。
視線は痛いほど刺さるが、黙秘権を決め込んでいる俺が口を開くことはないと諦めたらしい薮が運ばれてきた熱燗を飲み始めた。
お酒に弱い俺に対して薮はまあまあ強くて、いつも安心して飲みすぎちゃうんだけど…今日は負けた気分になるからチビチビ飲む。
酔わないとやってられないなんて格好つかないから。
両手でコップを持って飲んでると、前から感じる視線。
声をかけるわけでもなくただ視線を寄越してくるような奴は一人しかいない。
「 ………なに?」
宏太「 弱え奴がチビチビ飲むのは逆効果だぞ 」
「 今日は酔い潰れようかな 」
宏太「 勘弁しろ…貸せ 」
半分以上残ってたそれを、俺の手から奪い取りグビッと飲み干した。
あまりにいい飲みっぷりだから拍手してしまったくらい。
徐に店員を呼び出しリンゴジュースを持って来させると俺に差し出した。
宏太「 ガキはジュースでも飲んどけ 」
その言葉に、なぜか泣けてしまって溢れてくる涙を拭わないままリンゴジュースにストローをさした。
「…あーゆうとくんかっこよかったな 」
好きにはならないから。
だからせめて、助けてくれた人だと割り切ってもう一度だけ………会いたい。
瞼を閉じると、今より青い俺が浮かぶ。
あの山を、あの坂道を、ただ走った。
人を好きになる気持ちを置きざりにして。
宏太「 何も望まなければ、傷つかずに済む…ってか?」
「 ………やぶ 」
ほろ苦いお酒の味が、喉と心に苦しく乗りかかる。
お前から奪ったものは、お前が一番大切にしてた人で。許されちゃいけない。
それなのに傍にいるのが居心地が良くて離れられないんだ。
宏太「 ……クソガキが 」
顔も見てないのに、笑顔だと分かる温かさが滲んだ声に涙がまたこぼれた。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時