雨宿りするなら君の胸の中で。 ytin

41. 幸せならそれで ページ41

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ドクン、ドクン、と心臓の音がダイレクトな耳に届く。

俺の音？いやそれとも……





「 やま、どうしたの？」









もしかしたら、母親の夢でも見ているのかもしれない。
そんな風に解釈してやまに向き直り、少しずつ距離を取りながら頭を撫でた。







涼介「 ………ゆうと、」


「 ん？俺はここに、いるよ？」









ずるい。そんな目をした、君が、泣きそうになる。


ごめんね。だけど俺は、こうやって知らないふりするしかできない。







涼介「 きすして 」


「 …だーめ。」


涼介「 じゃあ、抱きしめて…壊れるくらい、抱きしめてよ、もう一回 」









あの雨の日。
君に縋った俺が悪かった。

そんなの分かってる。
ずっと前から、君の気持ちを知っていながら、俺は君にキスをした。







「 できないよ、やま 」









俺が微笑うと「知ってるよ」と君も微笑った。
その顔は、泣き顔よりも切なかった。









涼介「 …俺、裕翔が幸せならそれで、いいんだ。」





じわり、大きな瞳が滲んでく。
水分を多く含み、今にもこぼれ落ちそうだ。

俺はぐっ、と拳を握って深呼吸した。







「 …ごめん。」


涼介「 何に対してのごめん、だよ 」






バカにすんな、って弱々しい拳が俺の胸を叩く。
熱のせいか、何のせいか、紅潮した頬を引きつらせて、涼介が息を吐いた。








涼介「 もうずっと前から、お前の幸せが………俺の、幸せだから 」







拭えない涙。
受け入れてあげられない気持ち。

泣きそうだ。貰い泣きじゃなく、ただ、悲しくって、虚しくって。









涼介が自分のことをそんな目で見ていたことを知ったから？…ううん。








「 …ありがと、やまちゃん 」







いつからか張られていた君の瞳にあった透明な膜がパリン、と割れたような気がしたんだ。

見えない壁がなくなったって。







気づいていたと言ったら君はどんな顔をするんだろう。
やっぱり傷つくのかな。








涼介「 これからも…俺の友達でいてくれる？」








それでも俺は、君の友達でいることをやめられない。








「 当たり前だよ。やまは大心友なんだから 」







だって俺の心友はもうずっと前から、慧さんじゃなくて、やまでしょ？








俺の言葉に安心したのか、ふっ、と笑って意識を手放したやまを抱き上げベッドへ降ろす。









「 じゃあね、やま 」




銀色のこれは、もうここに、置いて行くね。

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