雨宿りするなら君の胸の中で。 ytin

10. 王様と帝王 ページ10

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「 …まさか伊野尾の言うヒーローくんが、あの中島裕翔だったとはねぇ 」







世の中狭いわ、なんて笑いながら長い足を組み直すその人。

慧さんの同僚で幼馴染でもある薮宏太さん。
普通のリーマンっていう割に貫禄と容姿がすでに普通じゃないんですけどね。








慧「 っもう、やぶ！……ごめんね、裕翔くん。俺、ゆうとくんがモデルさんって知らなくって…」


「 いやいや！俺もまだまだですから 」


宏太「 まだまだつったって…ドラマに映画に、写真集もバカ売れしてんじゃねーの。逆に知らないでよく生きて来れたなお前 」


慧「 うっ…だって俺昔から芸能には疎いんだもん 」



宏太「 はいはい。勉強しよーな 」









ポンポン、薮さんが慧さんの頭に触れる。
特別照れた様子は見受けられなくとも、慧さんに簡単に触れられる薮さんが羨ましくてたまらない。


俺ってば今朝出会ったばかりの人に、こんなに執心しちゃうなんて……








慧「 えっと、それでお隣は…」



涼介「 おいおい。オニーサン、俺のことも知らないの？」



「 ちょ、やま！態度でかい！」



すみませんとなぜか俺が平謝りし、やまに至っては酔ってんのか酔ってないのか最早分からない。





宏太「 山田涼介。うちの部とコラボ企画したこと何度かあったろ 」


慧「 ……そうだっけ？」


宏太「 まあお前は参加してなかったからなあ。にきても女性社員が色めきだってたろ？」


慧「 あー思い出した…あの妙に香水の匂いがキツかったり化粧直しが長かったりした時期だ 」









相当キツかったのか、慧さんの色白の顔が青くなる。なんか…申し訳ない。





涼介「 てかね、慧さん？であってる？」


慧「 あ…うん。伊野尾慧です 」


涼介「 んーじゃあ、いのおちゃんね。そう、俺はいのおちゃんと会って話したかったの 」









慧さんのことを伊野尾ちゃんだなんて呼び出すから酔い潰れてはないけど、いつも通りなわけでもないらしい。

何か変なことを言いそうで、いや普段から変なことしか言わないからヒヤヒヤしながらアイスティーを飲む。







……そういえばドリンク何にします？って聞いた時なぜか少し照れながらココアって言った慧さん可愛かったな。多分あれは年上なのにコーヒーが飲めないっていう恥じらいからなんだろうな。あぁやっぱり女神だ。いや天使か。









涼介「 ぶっちゃけ裕翔のことどう思ってます？」









や、や……やまぁっ？！

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