31. おそらのうえ ページ31
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慧「 ボク、名前は?」
小さな背丈に合うよう、慧さんがしゃがみ込んでいつもより柔らかく笑いかけた。
大人気ないが、正直かなり羨ましい。
「 …ユウリ。」
裕翔「 ゆうり?」
こくこく、首を動かし、小さな掌を見せ、指で不恰好な四を作る。
「 ゆうり。よんさい!」
慧「 そっかあ。ゆうりくん、4歳なんだ 」
伝わったのが嬉しかったのか、頰を桃色にして笑うゆうりくんは幼いながらにとても愛らしく、しっかりと美少年ぶりを発揮していた。
「 ゆうりね、かんじも書けるのよ 」
そう言うと徐に小石で土に書き始める。
俺も、慧さんと同じようにしゃがみ込んでゆうりくんに寄り添った。
「 ……侑、李?」
その字はとてもよれていて、書き順なんてめちゃくちゃで、だけど……
「 ぼくのまま、字がへたくそだったんだよ。こーんな風にね!」
愛されてるって、よく分かる。
「 ぼくに教えてくれるときも、ぼくとおんなしくらいきたなかったんだから!」
胸が痛い。過呼吸になる前の、そんな感じ。
息が吸いにくくなって…ヒュウと喉の奥が鳴るんだ。
「 ぼくのままはね、ぶきっちょだったんだよー 」
だけど、俺たちは気づいてた。
侑李くんから紡がれるママに関しての思い出が全て、過去形だということを。
「 …ママは、今どこにいるのかな?」
なるべく優しく。柔らかく。
それでいてちゃんと答えて貰えるように、真っ直ぐに目を見て。
侑李「 んーよくわからないの。でもね、せんせえは、おそらの上だって言ってた!」
どこだろうねぇ、とまた可愛らしく笑うその表情。
子供らしいあどけなさの他に寂しさが光った気がして、無意識に掌を握っていた。
大方、母親は亡くなっていて、身寄りがなくなったこの子は施設に預けられたんだろう。
先生はきっと、施設のスタッフのことだと思う。
「 侑李くん。先生が来てくれるまで、お兄ちゃんたちとおしゃべりしよっか 」
慧「 …侑李くんのお話、もっと聞きたいなあ 」
こんな小さな子に、暗がりは似合わない。
それもまだ母親の綺麗な記憶しかないのなら、尚更。
侑李「 うふふ。いいよぉ!ゆうりと、お話しよ!」
この子の口から出るのは、不器用で、だけど一生懸命な母親の話。
そして俺が脳裏に浮かべるのは…似ても似つかない、女だった。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時