01. 水色の出逢い ページ1
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またか……
緊張感と傷ついた心を抱えながら心の中で呟いた。
全神経は触られているお尻にいっていて通勤通学ラッシュの電車内では当たり前だけど誰も気がつかない。
「 っやめ、」
( 騒いだらどうなるかわかってる?恥ずかしいのは君じゃない?勘違いするなと怒鳴ってもいいんだよ?)
言い出せなかった、やめてくださいという言葉を飲み込んだ代わりに整理的かつ感情的な涙で視界がにじむ。
座席真横の鉄パイプを握りエスカレートしていく手つきにじっと耐えた。
初めて、痴漢をされたのは中学二年生のとき。
それからずっと。できるだけ満員電車は避けて生きるようにしていたけど今日は寝坊してしまっていつもの空いている時間に乗れなかった。
…痴漢されるような俺が悪いんだ。
涙卑屈になり涙を拭うことすらできなくて、目をぎゅっとつむった。
( んな顔してると誘ってるようにしか見えないよ?)
荒い息遣いが耳元に届いて、気持ち悪い。
あぁもうほんと…勘弁してよ。
胸元にまで伸びてきた手にこぼれた涙が、情けなく頬を伝った。
その数秒後。腕が掴まれた。
「 …わー!久しぶりです!元気でしたか?」
「 っへ?」
黒い髪の、青年。
見た感じ俺より若いのは確かで、そして知らない人。
でも彼今…久しぶりって…
「 今日会えるの楽しみでしたー!」
ずい、っと俺に絡んでた手を押し出すように、痴漢してきた男を牽制した彼は覚めた目つきで笑う。
「 なにか?」
( ….チッ、どけ!)
人並みに流れ離れた場所に行ったその人に安心感からかふらついてしまった。
電車の揺れと目眩のせいでよろけた身体は、助けてくれた彼に抱きとめられる。
「 っと……大丈夫ですか?」
コクコクと頷くと、さっきの貼り付けたような笑顔じゃなくて向日葵みたいな眩しさを前面に笑った彼はそのまま俺を支えてくれて。
とりあえず次の駅で降りた。
「 すみません、もっと早く気づいて声をかければよかったんですけど。」
「 そんな!助けてくださってありがとうございます。」
頭をかいて照れ笑いを浮かべる。
「 あなたのことも傷つけないようにするにはどうしたらいいか迷ってしまって。」
なんて、優しい人なんだろうと。
久しく感じなかったときめきが胸を過ぎった。
爽やかな水色の風が2人を包むように。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時