033 ひとつぶ ページ33
yt side
結局、涼介はあの後ササっと撮影を終わらせて何やら知念に電話をしていた。
本来なら苦情の電話を俺が入れてもいいけど、お世話になった点を含めたらプラマイだけど圧倒的に感謝せざるをえない。
だから今回は仕方なく目をつぶった。
涼介「 …えっと、とりあえず俺の家に来たけどよかった?」
「 いやそれは勿論。むしろありがたい。急にほんとごめんね?」
涼介「 ううん。さっきのは、驚いたけど……どこから聞いたらいいかな 」
カジュアルだけど、シックな色味でまとめられている部屋は彼らしさが詰まっていて、涼介の匂いが充満しているこの空間に入れることが幸せだった。
友達でいた時も、恋人だった時も、涼介の家へは行かなかったから。
「 …まず、俺は涼介と付き合っていた頃もいのちゃんが好きだった。」
離れる前に君に言った「好きなんだ」は嘘だった。
確かに好きだったけど、どうしてもいのちゃんを忘れきれない自分がいたから。
涼介「 うん。知ってる 」
「 …フランスへ行って、弁護士として働いたよ。片時もいのちゃんから離れることはなかった。ハグもキスも、それ以上だったした 」
涼介の顔がどんどん曇っていく。
それでも、俺はやめられなかった。
過去を知る必要はないって割り切ることができるけど、それじゃあ前と何も変わらない。
不安にさせるくらいなら、傷つけてでも一緒にいる道を選べる覚悟をもってきたんだ。
「 だけどね、五年間いのちゃんの傍にいて温もりを感じてたはずなのに……俺は涼介を一度も忘れることはできなかったんだよ。」
雪の降る寒い冬になると、凍えそうになりながら君の笑顔を思い出した。
街中で赤いマフラーを見かけると、無意識にその後を追っていた。
いのちゃんがつけない甘い香水。
匂いこそ忘れてしまったのに、感覚的に覚えていて花屋の前を通るといつも胸が締め付けられた。その度に、好きだと自覚させられた。
「 こんなの、ずるいってわかってる…だけど!……だけど好きなんだ、涼介のこと。今でも…いや今の方が、ずっと 」
涼介「 ゆう、と…」
真っ白な頬に手を添える。
甘い匂いが侵食していくように俺にうつって、泣きそうな君の目を捉えた。
「 愛してる。もう、離したくない 」
ゆうと、と動いた唇。
涙が一粒こぼれてしまうより先に、
どちらからともなくキスをした。
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Kasumisou*(プロフ) - ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ ありがとうございます!!楽しみに待ってます!! (2018年2月9日 23時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - へびさん怪人さん» いつもコメントくださりありがとうございますー。今コクのありちねちゃんは神楽もお気に入りなので是非書かせていただきます! (2018年2月9日 8時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - Kasumisou*さん» いつもコメントありがとうございます〜。うふふ、デイズはかなり皆様に好評だったみたいで神楽も嬉しいです。あの2組ぜひ書かせていただきますね。 (2018年2月9日 8時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
Kasumisou*(プロフ) - 完結おめでとうございます!コンビなのですが、ゆとやまさんが一番好きなのですが、神楽さんのお話の中ではデイズのやまいのさんとゆとちねさんがとても大好きです!なので、やまいのとゆとちねを推薦します!2組になってまいすみませんm(._.*)m (2018年2月5日 23時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
arymきゃんでぃ?(プロフ) - こんにちは!やはりゆとやまに100票です笑 (2018年2月5日 22時) (レス) id: 16e28f2251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2017年12月23日 22時