030 ハグをしよう ページ30
yt side
「 け、」
一粒だけこぼれたそれが、雪と一緒に溶けていく。
慧「 いのちゃん 」
「 …え?」
あの日のデジャヴだ。
寂しそうに影を作って、君は俯いた。
まだ熱を持ってる唇と、君の香りのするマフラー。
慧「 戻ろうね、ただの幼馴染に。それで、他人になろう 」
引き止めないと、また、手離すことになる。
そう分かっていて君の手を取れない。
安易に優しくするのが傷つけるって俺は知ってる。
冬はいのちゃんの映える季節。
可憐な花みたいで、冬に咲くのはずっと君だけだった。
「 …分かったよ 」
繋いでいた手が、そっと離れる。
そばにあった温もりがゆっくりと消えていく。
冷たい手だって、俺の手と重ねればいつも温かくて。
少し低い位置から俺のことを見上げてくる目が好きでたまらなかった。
全部、終わるんだね。
日本へ帰れば君はもう他人で、俺たちはもうきっと、笑い合うことすらできないんだね?
ぐっ、とこみ上げてくるものを牽制してぎこちなく笑いかけた。
君の犯した罪も笑って流した俺に、優しさが辛いと、俺の胸でなく君はもういない。
慧「 おれね、あと一年こっちにいる。」
「 …え、ちょ、まって。チケットは?」
含み笑いするいのちゃんが手をひらひらとあげた。
さっきまで握ってたその手は当たり前のように華奢で。
俺がいなくて、この人は大丈夫なんだろうか。
余計なお世話だも思うけど…やっぱり心配だ。
慧「 大丈夫だよ。お前がいなくたって生きれるよ。」
「 でも…」
冷たい掌が俺の頬を包んで、少し背伸びする君が真っ直ぐな目を俺に向ける。
たったそれだけなのに泣きそになった。
この気持ちがただの執着だってことをちゃんと分かってるからこそお互いのためにもここで切り離したほうがいいんだろう。
慧「 裕翔はちゃんと、守りたい人を守れる人になって?」
約束ね、って微笑んだいのちゃんに我慢していた涙が溢れる。
ガキみてぇ、って笑われたって気にしない。
好きな人が涼介だとしても、君が大切なのは一生変わらないから。
「 いのちゃん、」
慧「 ん?」
「 ハグをしよう 」
抱きあうのなんていつぶりだ。
もう涙が止まらなくなってしまった俺の頭を笑いながら撫でるいのちゃんはやっぱり、何一つ変わっていなくて安心した。
この日初めて俺と君は、幼馴染になった。
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Kasumisou*(プロフ) - ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ ありがとうございます!!楽しみに待ってます!! (2018年2月9日 23時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - へびさん怪人さん» いつもコメントくださりありがとうございますー。今コクのありちねちゃんは神楽もお気に入りなので是非書かせていただきます! (2018年2月9日 8時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - Kasumisou*さん» いつもコメントありがとうございます〜。うふふ、デイズはかなり皆様に好評だったみたいで神楽も嬉しいです。あの2組ぜひ書かせていただきますね。 (2018年2月9日 8時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
Kasumisou*(プロフ) - 完結おめでとうございます!コンビなのですが、ゆとやまさんが一番好きなのですが、神楽さんのお話の中ではデイズのやまいのさんとゆとちねさんがとても大好きです!なので、やまいのとゆとちねを推薦します!2組になってまいすみませんm(._.*)m (2018年2月5日 23時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
arymきゃんでぃ?(プロフ) - こんにちは!やはりゆとやまに100票です笑 (2018年2月5日 22時) (レス) id: 16e28f2251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2017年12月23日 22時