022 うそつき ページ22
yt side
慧と呼ぶようになったのはここに来てすぐの6月。
『 誕生日プレゼント何がいい?』ってなんとなく聞いたら
『 じゃあ慧って呼んでよ 』
寂しそうに笑いながらそう言われた。
その瞳が誰を想ってるのかなんて考えなくても分かる。
だから俺も笑って『 ん、分かった 』って。持てるだけの愛で抱きしめた。
涼介を好きだと思う気持ちと、慧を放っておけないと思う気持ち。
壊れた天秤がゆらゆら揺れて俺を絆す。
正解はあるはずなのに、抜けられない闇に吸い込まれて、目を閉じてしまいそうになるんだ。
バカみたいに離れたくないと願ったあの日を心の奥底に沈めて、嘘ではないけど本音でもない愛を慧に囁く。
大人になった俺には、そんなこと容易かった。
慧「 ね、昨日ゆうとが言ってたさあ、」
にこにこ笑いながらカウンターに頬杖をついて、料理する俺に一生懸命に話しかけてくれる彼の声に耳を傾ける。
「 あぁ、角のフラワーショップ?」
慧「 そう!気晴らしに散歩した時チラッとだけ見たの。」
「 どうよ、慧好みだったっしょ?ふふ。」
慧「 ドンピシャ!さっすがゆーと!」
笑ったと思ったらサラダのトマトをつまみ食いした。
「 んもうっ」とか言いつつ、その横顔を盗み見た。
目を伏せて今日会ったことを楽しそうに話してくれてる。
その姿がなんだか健気で笑みがこぼれた。
もう三十路手前だというのに、年齢を感じさせない彼は当たり前のようにこっちでもモテた。
さらにこっちの人は綺麗なら男も女も関係ないし、アプローチもかなり積極的だからこれまた厄介で。
牽制するのにも動力を使うし、かといっていつでも慧の傍にいて見張ることもできないから心配だ。
慧「 ほんと、ゆーとがいなきゃ俺ダメだね 」
それに最近、涼介に片想いしていた頃の顔をよくするようになった。
寂しそうでだけど嬉しそうで。
恋でもしたのかと思ったけど、そういう素振りも見せないし。
『 悪いことは言わないから、伊野尾慧から手を引いたほうがいい 』
フランスへ発つ前、知念に告げられたのはいのちゃんの人間とは思えない卑劣な作戦だった。
『 知ってるよ。いのちゃんが、何を遠ざけたくてどうしたかったのか 』
でも俺はそれを知ってても尚、彼を愛していた。
ずっと見てきたんだ。何を思ってるのかくらい簡単に分かった。
それでも、好きだった。
俺にはいのちゃんだけだった。
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Kasumisou*(プロフ) - ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ ありがとうございます!!楽しみに待ってます!! (2018年2月9日 23時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - へびさん怪人さん» いつもコメントくださりありがとうございますー。今コクのありちねちゃんは神楽もお気に入りなので是非書かせていただきます! (2018年2月9日 8時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - Kasumisou*さん» いつもコメントありがとうございます〜。うふふ、デイズはかなり皆様に好評だったみたいで神楽も嬉しいです。あの2組ぜひ書かせていただきますね。 (2018年2月9日 8時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
Kasumisou*(プロフ) - 完結おめでとうございます!コンビなのですが、ゆとやまさんが一番好きなのですが、神楽さんのお話の中ではデイズのやまいのさんとゆとちねさんがとても大好きです!なので、やまいのとゆとちねを推薦します!2組になってまいすみませんm(._.*)m (2018年2月5日 23時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
arymきゃんでぃ?(プロフ) - こんにちは!やはりゆとやまに100票です笑 (2018年2月5日 22時) (レス) id: 16e28f2251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2017年12月23日 22時