シーズンワン ytin ページ25
in side
小さな頃、俺の手を振り払った
母さんはとても冷たい瞳をしていた。
ふう、と曇った息を吐いて
『 泥棒猫 』
冷めた声で俺を捨てた。
赤い口紅が綺麗に塗られた、あの人をもう俺は母さんと呼べない。
それが、10歳の時。
最後に見た、母さん。
「 …伊野尾、大丈夫か？」
トン、と肩を触られて驚いたけど
見れば薮だったから肩を落とした。
「 うん、ごめん…」
宏太「 悪いな。今日はどうしてもで…」
「 ううん。光には俺も世話になってるし 」
宏太「 いや、そうじゃなくって、な 」
「 ん？」
わざと外が見えないよう黒塗りにされてる窓を見つめる。
これを、開けようとは思わないけど。
それでも少しは好奇心が働く。
宏太「 その…俺の友人が来るって言っただろ？」
「 ああ、それか 」
宏太「 …ごめんな。そういう奴じゃないっていうのは確信してるんだけど。怖いだろ？」
割れ物を扱うような優しい瞳で薮は俺の心を包んでくれる。
光もそうだ。
二人は優しすぎて、触れるのも躊躇う。
俺なんかが、っていうとまた長々と説教をされると思うから言わないけど。
「 いいよ。たまには。」
宏太「 けどお前… 」
「 薮はその人を紹介するとき、知り合いじゃなくって友人って言ったろ？だからいい 」
驚いたような、嬉しそうな、複雑な顔をする薮は困ったように微笑った。
だって本当だよ。
俺を守ろうとしてくれてる二人から友人を紹介されるだなんていつぶりだろう。
「 それに… 」
たかぎと、だいちゃん以来。
もう５年も前になるのか。
俺はそっと薮の手を握った。
「 寂しかったし 」
やっぱり震えてしまうこのポンコツ。
だけどね、ほんとに、嫌じゃないの。
俺という存在があるから人より警戒心の強い二人は、友人を作ることさえ躊躇う。
だから俺は、こうして紹介してくれる人を信じられる。
たかぎもだいちゃんも良い人だったし。
あの日、5歳のあの日。
俺の止まったままの時間は動くことなく、歳ばかりとってしまったけれど
無駄にあの男のDNAを引いてるからだろうか。
勉強はできた俺は通信制でもなんら問題はなかった。
そのまま卒業して社会人になって。
ああ、吐き気がする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 245人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こさこ(プロフ) - こんにちは(*´ｰ`*)すごく表現が綺麗なお話がいっぱいで夢中になって読みました◎とくに最後のゆといのちゃんのお話すっごく続きが気になります…!!(←ゆといの厨なので)素敵なお話をありがとうございました！ (2018年1月8日 17時) (
レス) id: 4f9f600403 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神楽
| 作成日時：2017年4月26日 16時
