切なさ ページ10
ym side
大貴「 …じゃあ、その廊下でいのちゃんの泣き顔を見た時好きになったの?」
大ちゃんが興味津々そうに身を乗り出して尋ねる。
心なしか目がきらめいているのが可愛くって、クスッと笑みが零れた。
「 ちょっと不謹慎だけど、伊野尾ちゃんの涙に惚れた…と思う。」
大貴「 まあ、いのちゃん美人だもんなあ。その気持ちは分からんでもない!」
…なぜかドヤってる大ちゃんが壁に寄りかかりながらココアを飲み干した。
「 んなこと言っていいのかよ。知念にチクるぞ?」
大貴「 だっー!やめてっ?違うから!…その、何て言うの?」
「 何よ 」
冷や汗かきながら代弁する大ちゃんが想像より面白くって、もう少しからかってみる。
大貴「 いのちゃんの好きと知念の好きは別って言うか…そのー、あのー」
「 …ふふ、はいはい。わーかったら落ち着いて 」
ほんと?って言葉に頷くと、安堵の溜息を零す。
「 冗談に決まってるでしょ 」
大貴「 いや、お前と知念の仲ならあり得る。」
「 俺をなんだと思ってんの 」
俺を新手のスパイかなんかだと思ってるらしい大ちゃんは
頬杖を付きながら今度は知念のことを話し始めた。
大ちゃんの話す知念は、簡単に表情が想像できる。
…だけどそれでいて俺も知らないような可愛い知念がいるってことも知った。
「 お似合いじゃん。」
本心から漏れた言葉。
それは、微笑ましさと羨ましさが含まれていて。
どうしたって心のどこかには伊野尾ちゃんがいるんだから、もうこんなの惚れた弱みだ。
大貴「 山田は?」
「 ん?」
大貴「 いのちゃんのどこを好きになってるの?」
さっきまでとは違う真剣な眼差しと本気の声色に、俺もつい構えてしまう。
分かってるんだ。
大ちゃんにとって伊野尾ちゃんがどれほど大切な人なのか。
それは決して恋ではないけど、それに近くて遠い家族のような兄弟のような
言葉では表し切れない感情なんだと思う。
だからこそ、大ちゃんは俺に問う。
『 お前は、いのちゃんを幸せにできるのか?』って。
「 …そう、だな 」
例えば今、伊野尾ちゃんを思い浮かべてみると
春の木漏れ日みたいな甘い柔らかさが胸を包み込む。
優しくてそれであって切ない、彼にしかできない表情に高鳴るのは俺の胸の内。
俺はこの10年、誰かを想う伊野尾ちゃんを想い続けてきた。
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ふるは(プロフ) - やまいのさん。好きなのでとても幸せです。 (2018年12月16日 10時) (レス) id: df18d22876 (このIDを非表示/違反報告)
はっぱっぱ(プロフ) - やっと読めました・・・!暇になったので一気読みしました笑 やっぱりこのお話最高です、!山田くんと伊野尾くんの美しい画が浮かんできたくらいです・・・!これからも何度か読み返させて貰います♪ (2018年2月9日 16時) (レス) id: 296b5b94d2 (このIDを非表示/違反報告)
Kasumisou*(プロフ) - こちらこそよろしくお願いします(*´v`) (2018年1月25日 2時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - Kasumisou*さん» ご指摘ありがとうございます。後悔し忘れておりました、申し訳ありません。再度公開させていただきました。これからも至らない点ばかりだとは思いますが作品共々宜しくお願い致します。 (2018年1月24日 22時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
Kasumisou*(プロフ) - あの、愛しいから契りに変わる時の話って、飛んだりしてますか?違和感を感じたのでお伝えしようと思いました。私の勘違いなら、気にしなくて大丈夫です!これからもお話楽しみにしています。 (2018年1月24日 21時) (レス) id: 76a2f85b45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2017年3月18日 15時