溺愛 ymin

契り ページ19

ym side









慧「 んーすき 」




俺の手に擦り寄る伊野尾ちゃんが可愛くて、つい自分たちの世界へ入ってしまう。









「 伊野尾ちゃん、ワックス取れかかってるからメイクさんとこ行ってきな？」


慧「 …うん。待っててね？」


「 伊野尾ちゃんを置いてなんていかないよ 」









嬉しそうにはにかんで、メイクさんのとこへ駆け寄ってく伊野尾ちゃんの後ろ姿を見送って……痛いくらい刺さってた視線の方へ振り向く。









「 …詳しくは、あとで 」









まだ楽屋に残ってた数人が、目を見開いて俺らを見てた。
伊野尾ちゃんは今日のイベントでの婚約発表だけを考えてるから気づいていなかった。






いつもはしない余計な緊張をしているからか、青白い顔。
だけど可愛いなんてほんと、罪作りすぎ。







「 …可愛いなあ 」






俺の呟きが聞こえたのか、知念が訝しげに俺を見つめる。






侑李「 …気持ち悪いんだけど。何？」

「 一節だけ歌う奴が何言ってんだよ 」

侑李「 僕はいいんだよ…それで、何なの？」







上の空な伊野尾ちゃんをこれまた愛しそうに見つめるから、天使なコラボだなって微笑ましくなった。


そしてそれと同時に、軽く殺されるんじゃないかと苦笑が漏れる。







伊野尾ちゃんを、"僕の天使"と称している彼のことだ。やりかねない…








「 後で分かるってば、」

侑李「 ナニソレ 」

「 ほら知念も最終行っといで 」

侑李「 …ほんと、話逸らすの上手いよね 」









呆れ顔の知念と呆然と見てた裕翔を見送ると、楽屋には俺と光くんだけになった。









光「 …えっと、あれは…オメデタでいいの、か？」



遠慮がちに問いつつも、目は輝いていて
それからは伊野尾ちゃんへの想いが見えた。




「 うん…伊野尾ちゃんと、付き合い始めました 」






光「 …山田。俺たちはアイドルでさらに男だ。偏見なんて山程あって、大変だよ 」


「 うん、そうだよね 」


光「 もしかして、今日のフリータイム…」









流石、と言うまでもなく光くんは表情を緩めた。
薮ちゃんと付き合ってるだけあって、俺の…俺たちの考えなんてお見通しらしい。









「 もう、逃げるのは止めたんだ。」







嘘をつくのも、想いを隠すのも、
何もかも全部もう止めたから。




光「 …山田。いのちゃんを、宜しくね 」





少し寂しげにも見えるその顔は、いち早く交際を伝えたときの大ちゃんに重なって見えた。

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