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そんなことを考えながらも充電器のコードとイヤホンの絡まりが解け、やっとスマホ探しに集中できると思ったとき、扉の開く音がした。
メンバーかスタッフの誰かだろうと大して気に留めずスマホを探し続ける。
「北斗、樹が呼んでた」
いきなり声をかけられたことと、確かにメンバーの一人ではあるが、思いもよらない人物の登場に、俺は動揺してバッグを中身もろともぶちまけた。
「びっくりした…」
思考が停止してとりあえず思ったことを口に出した結果、出てきたのはそんなしょうもない感想だった。
昔であればいざ知らず、今は全く話さないわけではない。
けれどもやはり、二人きりとなると緊張してしまう。
それは昔の俺が_仲が良かった時期と仲が悪かった時期_両方の俺がまだ俺の中にいるからで。
金髪を揺らしながら、気まずそうに謝る京本に、俺もなんとなく謝る。
「…なんか、ごめん」
「いや、俺も驚いちゃって…」
居心地の悪くなった俺はバッグの中身を拾うことにした。すると、入口付近に立っていた京本も寄ってきて同じく荷物を拾い始めた。
が、
「あ、勝手に物触られるの嫌いだったっけ…」
確かに勝手に物を触れるのは苦手だが、それは他人に対してだけだ。メンバーは、それが京本であっても別に不快感はない。
「ありがとね、拾ってくれて」
俺は京本の手から荷物を取り、礼を言う。
「えっと、どう、いたしまして?」
何故か疑問形の京本に、俺の中の緊張が少しだけ和らぐのを感じる。
「なんで疑問形なの」
「どういたしましてで合ってんのかなって、思って」
チラチラ俺を見る京本に対し、また少し、昔のように戻れるかもと、そんなくだらないことを考えた。
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作者名:六花 | 作成日時:2019年5月18日 12時