彼らはいつもすれ違う。 (ページ19)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:53,007 hit

. ページ19

松村北斗side

朝、いつもの時間に起きた俺はトイレを済ませようと京本の部屋を出る。

すると昨夜と同じくばったり京本の父と遭遇してしまった。

「あ、北斗おはよう」

「おはようございます。昨日はすいませんでした。いきなり夜遅くに来ちゃって」

「いいのいいの。俺が劇団仲間連れて夜中にどんちゃん騒ぎするよりうちのも楽だと思うから」

そろそろ朝飯だから大我起こして下に来い、と言われた俺はトイレから戻ると京本のベッドに近付いた。

眉間に皺を寄せ、長い睫毛を伏せて小さな寝息を立てる京本に声をかける。

「京本、そろそろ起きないと…朝ごはんできたって政樹さんが呼んでたよ」

「………ほくと…？」

まだ完全に目が覚めていないようで、目を開けてからぼーっと俺を見つめて名前を呼んだ。会話はままならず、なぜ俺がいるかも理解できていないようだった。

「昨日、泊めてもらったから」

「…んー…いま何時…？」

汚い部屋で寝ているだけだというのに、朝日に照らされ輝く金髪と、彼の整った顔が合わさるとここがどこか分からなくなるほどの美しさだった。

俺は思わず心の中で高地に毒づいた。

あいつ、大我の寝起きは皆んなが想像するほど綺麗じゃないとか言ってたのに。

「ああ、今は9時半」

「くじはん…9時半っておま、今日の撮影10時スタートじゃんやっば！」

いきなり覚醒した京本に思わず笑いを堪えられず、俺は声を上げて笑った。

「あっはは！お前慌てすぎ。今日の予定、明日にズレたの聞いてなかった？」

そんな俺を見て、まだ寝癖がついたまま慌ててベッドを降りた京本は、ぴたりと停止してそんな俺を不思議そうに見ている。

「…俺、北斗が笑った顔ちゃんと見たのすごい久々」

感慨深い顔で頷く京本に、俺は居心地が悪くなり、さっと顔を背けて立ち上がる。

「あ、下呼んでたんだっけ。待たせるとうるさいからそろそろいくか」

そんな俺を見て急かされてると思ったのか、あくびをしながら床に散らばる物を蹴散らしながら俺に近づく。

「あ、そうだ…昨日のやつ、俺絶対言わないから安心しろ」

俺が部屋の扉に手を掛けた瞬間、とんでもない爆弾をぶっ込んでくる京本に俺は固まる。

何やってんだよ早く開けろーという京本の声は、どこか遠くから聞こえた。

.