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面白そうだなと思った本は、到底私では届かない本棚の1番上の段に鎮座していた。
見つけてしまったからには気になって仕方がなくて、一生懸命背伸びをして手を伸ばす。
「ん...無理かあ...」
そう思って諦めかけた瞬間、ふわりと間近で大好きな香りが漂った。
「お目当ての本はこれ?」
知らぬ間にすぐ側まで来ていたボムギュは、容易くその本を手に取ると私に差し出した。
「あ...うん、そう、ありがとう」
「どういたしまして」
別に初めてじゃないのに肩が触れ合う距離にいるのは久しぶりで、鼓動が高鳴る。
「ほ、本当に背伸びたよね、中学までは私より小さくて可愛かったのに」
「...」
勝手に気まずくなって、ボムギュの横をすり抜けようとしたその時。
「なぁ」
トンッと軽く肩を押されて、背中が本棚にぶつかる。
驚く暇も与えず、彼は私を閉じ込めるように両手をついた。
「...僕のこと嫌いになった?」
「...な、急にどうしたの」
「A、高校入ってからそっけないから」
「ちょっ...近い、」
背には本棚、目の前には彼の端正な顔。逃げ場を失った私をさらに追い詰めるように、近づく距離。
「...僕、Aが好き」
「....え」
「小さい頃から今までずっと好き。昔は小さくて頼りなかったけど、もう違う。
これからもずっと、お前の隣は僕がいい。
ねえ、Aは? 僕のこと...すき?」
思ってもみなかった言葉の連続に、息が出来なくなる。
そう言って、私をみつめるその顔は、
今まで何年も一緒に過ごしてきたのに、1度も見たことの無い顔だった。
いつになく真剣な表情に、隠していた心が暴かれる。
「わ、たしも、ボムギュが、すき」
とぎれとぎれに零れた私の想いをすくい上げるように、形のいい唇が寄せられる。
うすく開いた目からは、本棚の隙間から差し込む光に照らされて、数を数えられるほど近づいた彼のまつげがきらきらと輝くのが見えた。
「...おまえ、キスの時目開けるタイプ?ムード無さすぎない?」
「う、うるさい...急にしてきたのはそっちでしょ」
「ふは、やっぱり可愛くない」
「仕方ないでしょ...今のが初めてだし...ずっとボムギュだけだったから、」
「....ねぇ」
「な、なに」
「もう1回」
反論する間もなくまた口付けられて、頭がぼうっと幸福感に包まれる。
私たちの夏は、まだ始まったばかり。
夢にまで見た熱に浮かされて、耳障りだったはずの蝉の声なんてもう聞こえなくなっていた。
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るちる(プロフ) - ガフィさん» ガフィさんありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです...!これからも頑張って更新しますので、よろしくお願いいたします☺︎︎︎︎ (7月19日 12時) (レス) id: ed32ac0ac7 (このIDを非表示/違反報告)
ガフィ - めっちゃこの小説好きです!!大好きです!更新楽しみにしてます。頑張ってください! (7月17日 18時) (レス) @page5 id: ae97ca80d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るちる | 作成日時:2023年7月11日 1時