煉獄杏寿郎の歪んだ愛 弐

愛51 ページ1

目を開けると天井が見える。




杏「大丈夫か？」




声がした方を見れば杏寿郎が心配そうにこちらを見つめていた。




『大丈夫。多分貧血だと思う。心配かけてごめんね。』


杏「いや、大丈夫だ。」





そっと頭を撫でられ、気持ちよくて目を細める。



炎のような見た目なのに、意外と冷たい手をしている。





炎。





ふと、気絶する前に見えた物を思い出す。


聞いてみたいけど、聞いたらまずい気がする。


何か、良くない事が起こりそうな気がするからやめておこう。




外を見れば夕方になっていて、倒れてから数時間経っているのを知る。




『ごめん。お腹空いたでしょう。ご飯作るね。』


杏「体調は大丈夫なのか？」


『うん。』





そう言いながら起き上がり台所へ向かおうと杏寿郎の横を通り過ぎる。


足枷は外してくれたようだ。





杏「なぁ。A。」


『ん？』


杏「怒っているか？」




いつの間にか後ろに杏寿郎がいて抱き締められる。




『…怒ってないよ。』


杏「…すまない。だが、こうでもしないと……。」





振り返って杏寿郎の頬に手を添えれば頬ずりをしてくる。


杏寿郎の大きな瞳から涙が零れる。



私はこの時の杏寿郎にはとことん弱い。





杏「…居なくならないでくれ。」





まるで、私が何をしているのか見透かされたようで心臓が跳ねた。





杏「…よし！夕飯の支度をするか！」






いつものように元気な声を出した杏寿郎に手を引かれ台所へ向かう。




先程の杏寿郎の言葉に返せなかった。



何故か言葉に詰まった。




嘘でもいいから言ってしまえばいいのに、言うことが出来なかった。






杏寿郎への感情は暗いものしかない。




聞かれた時、殴られたことが頭をよぎった。




やっぱり、まだ洗脳されているのかもしれない。

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